第1章 惟任恋記
「いきなり早駆けは止めて下さい。心臓に悪いです。」
思いっきり早く走る馬に、必死でしがみついたせいで髪がぐちゃぐちゃに乱れたは光秀を睨みつけた
城の裏手にある小高い丘に着くと二人は馬から降りた
「体で覚えるのが一番早い。運動神経も知識も頭脳も人より劣るのなら人一倍練習しろ」
「ちゃんと人並みです。優しく教えてくれたらもっと早く覚えますよ!」
不意に近い距離で目が合い、綺麗な瞳が柔らかく微笑んでいるようでドキっする。
熱い視線に釘付けになり、目を逸らす事も出来なくてじっつと見つめた
「恋の“いろは"の手解きなら優しく教えてやるぞ。」
揶揄しながらも光秀は優しく目を細め、の乱れた髪に手を伸ばし、整える様に撫でてた
「ん?なんですか、いろはって?」
「世間知らずもここまでくると国宝物だな…本当に知らんのか?」
(いろはって、あいうえおの事だよね?
平仮名の読み書きを教えてくれるって事?)
思案顔で眉をひそめていると、おでこを指先でチョンっと押された
「今度じっくり教えてやろう。仕込みがいがありそうだな。 とりあえず今日は、お前の兄上が城の前で待ち伏せる前に帰るぞ。」
ニヤリと意味深な笑を浮かべると、クルリと背を向けて馬へと向かって歩き出した