第2章 廃れた島
「キャプテン!ちょっといいっすか?」
シャチが外から呼ぶ声で、ローは我に返った。
記念コインを見るとどうしても昔のことが思い出される。それほど彼にとって子供の頃のことは、その22年間の人生の全てのように感じられたのだった。
しかし決して辛く悲しいだけではなかった過去。そんな子供の頃を、ローはこうして時々思い出すのであった。
「あぁ、今行く」
短くそう返してから白い箱を机に戻し、ローは自室を出た。
航海士ベポの言うとおり、次の目的地であったバンディド島には浮上から2日ほどで到着できそうだった。
このあたりは海流の流れが早く、2日という短い期間で島がぼんやり見える距離まで近づいた。
「バンディド島は緑豊かなきれいな島なんだろ?なんでも動物たちの王国らしいぜ。他の島にはない薬草なんかも生えてるらしいから、俺達にとっちゃ最高の島だな!」
「へえ、森が多いなら食料確保も簡単そうだな。珍しいものも多そうだ。久々に揺れない場所で寝てぇし!」
シャチとペンギンはバンディド島到着を前に、嬉々として甲板でその話をしている。
実際、ずっと海の上を渡ってきた彼らにとって島に上陸するのは久しぶりのとこだ。
「あっ!見えてきたよ、バンディド島だ!」
ベポの声で海を振り返るが、その島が近づくに連れて全員が顔をしかめた。
「おい...どういうことだ?」
「分かんねぇけど、話に聞いてたのと全然違うじゃねぇか!」
「キャ、キャプテーン!!」
ドタドタと船内を走る足音に、ローは読んでいた本から顔を上げた。
「おいうるせぇぞ。何の騒ぎだ」
読書の邪魔をされて若干不機嫌な船長に申し訳なさを感じながらも、ベポは事態を説明した。
「バンディド島までもうすぐなんだけど、なんだか島の様子が変なんだよ!俺たちが聞いていたような島じゃないんだ!」
「...どういうことだ?」
「とにかく見たほうが早いよ、キャプテンも甲板へ!」
ベポの焦り具合にローも異常を察知したのか、素早く立って外に向かう。
__ガチャッと甲板のドアを開くと、目の前に飛び込んできたのはモクモクと無数の煙を上げる茶色い島。
バンディド島は緑なんてものはかけらもない、廃れた島と化していたのだった。