第2章 廃れた島
この海にいる人の数だけ、人生という名の物語がある。
主人公はその人自身。
平凡だったとしても、波乱万丈だったとしても、二度と繰り返されることのない海で生まれた大切な物語だ。
だが全ての生みの親である海は、時々面白いことをする。
人と人の物語を導き、つなぎ合わせるのだ。
決して交わることのない物語に触れ、絶え間なく打ち付ける白波で物語を運び、出会わせる。
そこから先は誰にもわからない。
どういう結末を迎えるのか、何が起こるのか。
それは海ですらわからないこと。
彼らの手で紡ぎ合わせていくことでのみ、物語を終焉へ運べるのだ。
海はただ、きっかけを作っただけ。
ただおおらかに、行く末を見守っている___