第4章 ぬくもり
その後また岩山を下っていくと、ようやく船を停めていた海岸までたどり着いた。
もう時刻はだいぶ遅く、太陽はとっぷりと地平線に隠れていた。気温も徐々に下がってきている。
ハートの海賊団の船、ポーラータング号は黄色い船体なのでよく目立つ。すぐに場所が分かり、早速クルーたちは整備に取り掛かった。
潜水艦は普通の船よりも頑丈ではあるが、仕組みが複雑なため日々の手入れが欠かせない。ちょっとした故障で船が動かなくなってしまったり、潜水できなくなってしまうのだ。もし海底で止まってしまったらと考えるとおそろしい。
「操舵室は異常無いぞ〜、シャチ、エンジンはどうだった?」
自分の持ち場の確認を終えたペンギンは、エンジン室を整備するシャチへ声をかけた。
「おう!こっちも大丈夫だ!」
あとはベポの持ち場であるタンクだけだ。
潜水艦は浮上時は、船体排水量が浮力より小さいので、水上に浮いている。潜りたい時は、艦内の海水槽に海水を注入し、船体排水量を浮力より大きくする事で沈降する。その海水槽が所謂タンクである。
ポーラータング号は長期間に渡る潜水が多いため、発電もそのタンクの水のエネルギーで行っている。水力発電のようなものだ。そこで得たエネルギーを航海や日常生活のためにも使っている。
「ベポ〜どうだ〜?」
ペンギンとシャチは二人で下のタンクまで移動した。
すると機械に囲まれながらもぞもぞと動く白い毛皮が見える。
「異常なしか?」
「異常ありだよっ!!どうしよう!!」
作業を覗き込んだシャチに、ベポはいきなり泣きついた。巨体がのしかかってきた重みで、後ろへ倒れる。
「痛ってェな...どうしたんだよ!」
「タンクが海水を吸水しないんだよ!何度もやり直したけどやっぱりだめ。これじゃあ発電できないよ!」
涙目で必死に訴えるベポ。二人はどれどれ...と機械を弄った。
「確かに...動かねェ」
「うんともすんとも言わねェな」
レバーを引いたり、起動ボタンを押したりしても、タンクは一向に吸水しない。
「前までこんなことなかったよ...どうしよう...」
今にも泣きそうなベポを落ち着けるべく、ペンギンは声を明るくして言った。
「キャプテンに相談しようぜ!大丈夫だって!」
しかし、これがもし直らなかったら、出航がかなり危ぶまれることをペンギンは知っていた。
