第4章 ぬくもり
「なんだよ...あいつ急に」
てっきり嫌味の一つでも言ってくるかと思ったのに、ローの言葉はそれと真反対だった。レンテは正直混乱したのだ。
「ローさんたちは悪い人じゃないのよ」
ローたちが出ていった扉を見ながらアルマは呟いた。
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「おい、珍しくねェか?キャプテンがあんな風に言うの」
「俺も思った!地下は勿論すごかったけど、それをわざわざキャプテンがレンテに言うとは思わなかった」
「俺らすら滅多に褒めてもらえないのにね...」
アルマの家を出たハートの海賊団は、むき出しの岩山から船の方へ降りていた。先を歩くローの後ろでシャチら3人は、コソコソと話し合っていた。
「でもアルマも珍しいと思わねェ?」
「キャプテンと普通に話してたよな...。キャプテンの名前を知ってたら絶対そうはできねェよ」
酒場でローに会った店主がいい例である。
ローの名前を聞くなり青ざめた彼の顔は、彼が世に名を馳せ始めている証拠だった。
「もし知らなかったとしてもよ、あんなに雰囲気よく話せねェよな」
事実、ローは見た目やぶっきらぼうな態度から、怖がられることが多い。本人は全く気にしていないが、ベポたちはそれが不満だった。自分の船長の凄さを知って欲しいという船長愛が強い一味だから一層のこと。
でもだからといって、愛想よくしてほしいとも思っていない。
先を見据える彼の姿は、鬼哭をかついだ長身と切れ長の目がよく似合う。
顔色一つ変えずに先陣を切って、敵をバラバラにしていく後ろ姿は何よりも心強いのだ。
「肝が座ってるっつーか、なんつーか」
「でも俺アルマ好きだよ!優しいし!それに...ミンク族の俺を見る目に差別が全くなかったんだ」
ベポはアルマに自己紹介した時を思い出していた。
白クマが喋ることには多少驚いてはいたが、アルマはすぐに打ち解けたように話してくれた。ベポにはそれがとても嬉しく感じられたのだ。
「おいお前ら。遅せぇぞ」
振り返ったローにクルーたちは慌てて早足で追いつく。つい話しながらだとペースダウンしてしまう。