第3章 波の音が聞こえる
すると、前を進んでいたアルマが止まる。ランプによって上にあったドアと同じドアが暗闇から映し出された。
不思議な木目のそのドアは、重厚そうに見える。
「ここです」
アルマはそのままドアノブをひねった。
すると眩しいほどの光がドアの間から漏れ出した。暗闇に慣れた目には痛いほどの明るさだ。
徐々に目が明るさに慣れてくると、驚くべき光景が広がっていることにローは気づいた。
天井に吊るされたランプからの煌々とした光を受け、辺り一面に植物が咲き乱れていた。バンディド島に来て、一度も見かけることのなかった植物が。
小さな水路がいくつも通され、水の流れる音がする。
ビニールハウスで囲まれた一帯や、黒い布をかけられ赤い光で照らしてある一帯など、エリアによって様々な植物が育てられている。小さな野草だけでなく、木も生えていた。
「すげぇ...こんな地下があるなんて...」
ペンギンが感嘆の声を漏らす。当然だ。初見でこんなものを見せられたら、誰もが驚くだろう。
「私達で何年もかけて作り上げました。これのおかげで生きていけています」
「お前と弟、たった二人でか?」
ローはアルマの言葉に耳を疑った。
「はい。試行錯誤を重ねながらレンテと二人で、です」
「そう簡単にはいかなかっただろ。そんな技術どこで得たんだ」
アルマたちの力に、ローは素直に称賛の気持ちを抱いていた。そもそも彼女はまだたったの18歳なのだから。
「両親から子供の時に教わりました。.....お父様とお母様が残してくれたものは、とても偉大なものばかりです...」
そう言って儚げに笑うアルマの顔に悲しみが滲んだのを、ローは見逃さなかった。
昔を思い懐かしむような気持ちだけではなく、寂寥の念が混じったように思えたのだ。
その気持ちを、ローは知っている。
きっと自分には憎悪の気持ちも相まっているだろうが...。
「さ、フロアズルの生息場所へ案内しましょう!こちらです」
先程よりも明るい声で言いながら、アルマはローたちを先導する。
ワクワク顔のシャチら3人の後ろを歩きながら、ローはアルマの小さな背中にある、何か強い信念を感じ取った。
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