第3章 波の音が聞こえる
しかしアルマはにこりと笑って言った。
「こちらこそ!」
ベポが思っていた反応とは全く異なる。冷たく刺すような視線ではなく、柔らかく暖かい眼差しがベポに向けられていた。ミンク族の自分を差別することなく、驚きもせず、対等に見てくれた。
そのことがベポにはとても嬉しく感じられたのだった。
「私はアルマです。10年以上前からこの島に住んでいて、ここで薬草を売ったりしながら生活しています」
「10年以上前から!?すげェな、こんな何もない島で!」
アルマの言葉に驚いてシャチが声を上げる。
すると今度はペンギンが指を折って数を数えながら尋ねた。
「え、ちょっと待ってくれ?10年以上前って...アルマ、今何歳だ?」
「えっと...確か...18ですね」
...静まる一同。
「「「は!?」」」
見事に声を揃えて叫んだ。
『18歳』
それにしてはアルマはあまりにも若いのだ。見た目は少女と言っていいほどで、大人目前の18歳には到底見えない。18ではローと4つしか変わらない。
これにはローも驚いた。
「さっきお前のことをガキと呼んだが、そいつが間違いだったとはな。18なんて、もうガキと呼べる歳じゃねェだろ...」
「そ、そんなに幼いですか?私」
「あぁ」
即答するロー。これにはアルマも少し傷ついた。
要するに子供っぽいということだ。言われて嬉しくはないだろう。
「まぁ歳のことはいい。俺らが欲しいのはフロアズルだ。それさえ手に入りゃこの島に用はねェ」
だが年齢などどうでもいい、馴れ合う必要性はない。そんなさっぱりと割り切った考え方をローは持っている。
彼女がフロアズルを売っていると知れたから、こうして関わっているのだ。
「...そうでした。ですが事前に知れた取引ではなかったので、今手元にはありません。私の家がこの近くにあるので、そこまでご同行していただきたいです」
「あぁ、構わねェ」
「では案内しますね」
そう言うとアルマは慣れた足取りで、岩をくぐったり登ったりしながら道なき道を進んでいった。
体力はそれなりにあるようで、普通なら息が切れそうな急な斜面も軽やかに登っていく。