第7章 『許すと、思う?』
『日曜日映画に行きたい』
『霧生、くん、と……』
正直言って自分の耳を疑った。
華が僕以外の誰かと、休みの日を過ごしたいなど。
今の今までそんなこと切り出したこともなかったのに。
それも。
他の『男』、と。
「………」
霧生に言いように言いくるめられたにしても、華は嫌なことはきっとちゃんと断る。
乗り気がしないものには興味さえ示さないだろう。
だからこれは、華が望んだこと。
『友達』と遊びに行く。
きっと華にとってはそんな些細なことなのだ。
「いいよ、行ってくれば」
「いいんですかっ?」
そんなに目をキラキラさせられたら。
惚れた弱みかな。
華がこんなことで喜ぶのなら、男と行く映画ぐらい安い代価かもしれないな。
なんて。
思ったことも事実。
だけどそんな想い、保険がわりに着けた盗聴噐から聞こえた言葉で木っ端微塵に吹っ飛んだ。
わかってる。
悪いのは華じゃない。
華は、見た目はもちろん申し分ないくらいの美少女だし、頼りなげな独特の雰囲気、元祖お嬢様、を産まれた時からすでに習得している。
男たちがほっとかないわけがないんだ。
純粋で、無垢で。
無知で。
汚したくない想いと、自分の手で汚したい相反する歪な思いを相手に思わせるあの雰囲気。
わかってる、けど。
一度たかが外れた暴走する理性は、自分でも止められない。
誰にも渡さない。
誰にも、触れさせてたまるか。
僕以外誰もいらなくなるまで。
誰のこと以外眼中になくなるまで。
おとしてあげる。
快楽の底の、その奥まで。
覚悟はいい?
泣いても気を失っても。
やめてあげるつもりはないから。