第3章 For My PRECIOUS YOU
すると、隊長の顔が少しだけ穏やかになったように思えた。
「隊長との約束ですから!それを果たしに参りました」
私は涅隊長の前に跪く。
「涅隊長、お待たせして申し訳ありません」
隊長は一つ大きく息をついた。
「待ちくたびれたヨ、英リコ」
その声音はさっきとは打って変わり、とても柔和なものだった。
私は涅隊長を見上げ、嬉しくてふふっと笑う。
すると、隊長も仕方なさそうにちょっとだけ微笑んでくれた。
「あなたは素敵な方です、涅隊長」
「総隊長の御前だ。慎みたまえヨ」
「はい。すみません」
私は叱られても、涅隊長を見上げながら顔が綻んでしまうのが止められない。
それほどまでに私は嬉しかった。
だって、ここまで来たということはあの日の約束の実現にまた近付いたってこと。
クオンと共に消えられる日は近い。
そして、空っぽの私に手を差し伸べてくれた涅隊長のお役に立てる日がようやく来た…。
「良かろう」
総隊長の重厚な声が部屋に響く。
「英リコ、十二番隊への入隊を認める。会議は以上」
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