第1章 RAINY RAINY DAY
彼の右手に持った刀の切っ先から、盗賊たちを斬った血が滴り落ちる。
この土砂降りでさえ、その血を洗い流すことはできなかった。
「離して!離して…っ」
子供の私がもがいて行こうにも、大人の男には敵わない。
諦めた私は動くのをやめた。
「クオンが…私の身代わりに…。私が…死ねば良かったのに…っ」
私の声をザァザァと雨音がかき消す。
「私も…死にたかった…っ」
男は何も言わずに私の体から手を離した。
「それは…悪いことをしたネ」
彼を見上げた私からそらされた、濡れた青髪と横顔。
雷鳴が轟く。
眩しい程に光るその金色の瞳。
私はバシャッと水溜まりに膝をつき、両手で顔を覆って慟哭した。
「うぁああああああッッーー…!!!」
私はその日、世界で一番大事な人を失った。
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