第1章 RAINY RAINY DAY
流魂街、西78区。
廃れた小屋のような簡素な家々が立ち並ぶ。
曇天の空から雨が降りしきる。
周囲には私たちを襲った盗賊たちが赤い血を流して倒れている。
「クオン…」
私はただ、うつ伏せに倒れた質素な格好の少年ー…クオンに手を伸ばす。
目の前の泥の水溜まりに、クオンの真っ赤な血が流れ込む。
その赤色が広がってゆくにつれて、私はクオンがもう助からないと悟った。
…私だけが助かった。
私だけが生き延びた。
「クオン…っ、クオン…」
泥濘に足を取られながら、おぼつかない足でクオンに近付く。
「…じきに霊子となって消える」
目の前に背を向けて立った黒い装束の青髪の男は、左腕で私の震える体を制止する。
「でも…っ、クオンが…寒そうにしてるから…」
雨音にかき消されそうになりながら震えた声を振り絞る。
私はクオンがまだ生きていると信じたいあまり、目の前の現実を否定しながら首を横に振った。
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