第13章 the TRUTH
「…何で、阿近さんは平気な顔していられるんですか?」
私は顔を覆っていた両手を膝の上に置き、阿近さんの方を見た。
阿近さんは片眉を上げて、「お前こそ何言ってんだ」とでも言いたげな表情で私を見る。
「俺はここの開局当初からいるが、あの人の才能と腕を信じ、尊敬しているからこそここまでついてきた。道徳、倫理…お前の言いたいことを差し置いてな。ここでやることは研究と開発だ。それを如何に使うかは使用者次第。局長には局長の考えがある。そこに異論はない」
全てを置き去りにして、それでも前に進む。
それが科学者という生き物で十二番隊の暗黙のルールだと言うのなら、平隊士の私がとやかく言うのは筋違いかもしれない。
でもーー…
「人が人として大切にしなきゃいけないものを捨て去ってまで、進歩させなきゃいけない科学なら!そんなのは科学じゃない!人への冒涜です!!」
私はぐっと涙を拭った。
「阿近さん、注射ありがとうございました」
私は驚いた様子の阿近さんを置いて、甚保くんと共に医務室を出た。
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