第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ…」
「戦い?」
「まさか…!」
「またヴィランが……!?」
皆の心配を遮るかのように、消ちゃんはぼそりと言葉を紡ぐ。
「…雄英体育祭が迫ってる」
えっ……!?
不安そうなざわめきから静まり返り、そして徐々に温度が上がってくる。
「「「クソ学校っぽいの来たー!!!」」」
あんなことがあったのに…外部から人を招く行事は自粛されるだろうと誰もが諦めていたから、やらないと思ってたのに…。盛り上がってしまうのも無理はないけど、決行するには何かしらの理由があるはず。
「クソ学校っぽいの来たー!」
熱血に滾る鋭児郎。けれど、それを上鳴くんが遮る。
「待て待て!」
「敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?」
「また襲撃されたりしたら…」
響香ちゃんが、消ちゃんに問いかけた。それは、1度冷静になったクラスメイト誰もが疑問に思う内容だった。
「逆に開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すって考えらしい。
警備も例年の5倍に強化するそうだ。何より、雄英の体育祭は最大のチャンス。ヴィラン如きで中止にしていい催しじゃねぇ」
「…いや、そこは中止にしよ?体育の祭りだよ…?」
「え、峰田くん…雄英の体育祭見たことないの?」
「あるに決まってんだろ?そういう事じゃなくてよォ…」
「うちの体育祭は日本のビッグイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典とよばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した。そして日本に於いて今かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ」
「当然、全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね」
「知ってるってば…」
「卒業後はプロ事務所にサイドキック入りがセオリーだもんな!」
「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴、アンタそうなりそう…アホだし」
毎年テレビ中継もされるビックイベントだからこそ、中止にしてしまえば、それこそ敵の思う壺…USJ事件で、あの雄英が揺らいでいると自己申告しているものだと教えているようなのだし、ただの学校の催しじゃないだけあって開催せざる得ない状況なんだろうな…。