第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
「そうか…お前がなんともないなら…それでいいよ」
「ーーー!」
消ちゃんはそう言って薄く笑った。生死の境をさまよい、酸素マスクで酸素吸入をしなきゃいけないくらいの呼吸困難になっていたのに、自分の身より私の事を心配してくれる彼に、なぜが胸が苦しくなる。
「…ばかっ…人の心配より…自分の体心配してよ…」
「あんなやつにやられる程、ヤワじゃない…」
「ふふ…酸素マスクつけられた人が言うセリフ?」
気だけは強い。私は思わず笑ってしまった。
「泣くか笑うかどっちかにしろ」
「消ちゃんがそうさせてるんじゃない」
ほんとに忙しい。自分でもそう思う。顔は笑ってるのに、相変わらず涙は止まってはくれなくて…そんな彼すら愛おしく思ってしまって、私ってとことん彼が好きで仕方ないのかもしれない。けれどそれは、どんなに願っても叶わない願い…このまま居候として一緒に住むか、ヒーローになって彼のサイドキックになるしか方法はない。仮に叶ったとしても、それは絶対に誰にも知られてはならない禁断の関係になる。消ちゃんだってバカじゃない。その辺の事くらい分かっているはず。
「お前だけは、必ず守りたかったんだよ」
「…私がパヒューム・ロックの娘だから?」
唐突にそんなことを聞いてしまった。
「…今は、そうと言っておく」
「え、それはどういう…」
“今は”という言葉が引っかかったけど、消ちゃんはそれ以上話そうとはしなかった。深く理由もないし、私も聞かなかったけれど、この意味がわかるのは、まだもう少し先のお話。
その後医師の診察を終えて、容態が安定したことから退院が明日に決まった。消ちゃんは退院早々学校に行く気満々だけど、両腕粉砕骨折してるのに大丈夫かな…顔だって骨折してるのにむしろそのタフさはどこから出てくるのか。どちらにせよ、今は無理は出来ない。
「消ちゃん」
「ん?」
私はとりあえず1日空けていた家に帰るため、身支度を整えながら消ちゃんに声をかけた。
「私…強くなれるかな」
「見込みがないやつは除籍処分する…俺はそう言った。さくらがまだ在学できてるってことは、まだ見込みがあるってことだ。お前は体は弱いくせに気が強いとこがあるからな…俺はそれを見込んで在学させた。自信持て…お前はまだまだ強くなれる」