第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
USJ事件が起きた翌日、私は学校を休んで朝から消ちゃんのお見舞いに来ていた。相変わらず、彼は意識が戻らないまま。脳に異常はみられなかったから、脳死状態にはならないだろうと先生は言ったけれど、いつ目覚めるかは分からない。それでも私は、彼が目覚めるまでそばにいたいと思った。
家から持ち込んだカリキュラムやテキストを読み、予習をする。たった1日とはいえ、みんなに後れを取る訳には行かない。私は、人の何倍も努力しなきゃいけないのだとUSJ事件で改めて実感した。それは座学より実践的な授業の方が有効なんだろうけど、消ちゃんのそばにいる以上それは出来ない。なら、今自分が出来ることをやるしかない。
骨折に伴う発熱もあって、息が荒くなる時があるから様子を伺う。ここに搬送された時は39℃を超える高熱が出ていた。しかし、点滴や抗生剤投与のおかげで今はだいぶ落ち着いた。消ちゃんの額に手をあてがう。それほど高くはないようだ。
「下がってる…熱自体は大丈夫そう。ちょっと飲み物買ってくるね…」
聞こえているか分からない彼にそう声を掛け、バッグから財布を出して病室の扉に手をかけたその時。
「さくら……」
「ーーーっ!!」
突然声をかけられ、そちらを向く。目に映ったのは、間違いなくこちらに顔を向けている消ちゃんの姿だった。顔全体に巻かれた包帯の隙間から、彼の目が開いているのがはっきり分かった。私は扉の方に向けていた体を、消ちゃんの方に向き直した。起きた…消ちゃん…!!
「……っ…ーーー…!消ちゃん…!!!」
もう、何度目になるだろうか。私は堪えきれない涙を拭いながら駆け寄った。
「…ここは…」
「病院だよ…!オールマイト先生が来てくれたあと、消ちゃん倒れちゃって…そこからずっと意識が戻らなくて…」
「やつらは…どうした」
「主犯格の死柄木弔と、その部下の黒霧ってやつには逃げられた…でも、アイツは…消ちゃんをこんなにした脳無は、オールマイト先生が倒したよ」
「…そうか」
消ちゃんは特に驚いたりすることなく、冷静に私の話を聞いていた。
「消ちゃん…ごめんね…!私があの時出しゃばらなかったら、こんな大怪我しなかった…!」
「お前は…大丈夫なのか…?」
「私は大丈夫…消ちゃんが守ってくれたから…」