第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
「さくら、相澤さんの容態は?」
「…峠は越えたけど、酷いケガだわ…意識もずっと戻らないの」
「そうか…けがの方は、刑事さんから聞いた。」
そう言いながら鋭児郎は、私の隣に椅子を置いて座った。
「…俺が他のヴィランと戦ってる間にこんな事になってたなんて…すぐに駆けつけてやれなくて、ごめんな」
「ううん…勝己くんや轟くんも来てくれて、すごく嬉しかったよ。私も…何か力になれたらよかったんだけど、ただの足でまといになっちゃった」
自分が情けなさすぎて、もう笑うしかなかった。
「バカだよね、本当に…私なら消ちゃんを援護できるなんてなんの根拠もなし突っ込んで行って…でも結局は消ちゃんを巻き込んで…私は助けられてばかりで…っ。それでこんな大ケガをさせてしまって…私はっ…ーーーっ…!!!」
膝の上でぎゅっと拳を作る。その上に、自責の涙が容赦なしにこぼれ落ちる。
「…相澤さんは、お前に巻き込まれたなんてこれっぽっちも思ってねえと思う」
「……っ!」
「…この人は、昔からそうなんだ。お前の事になると自分のことなんかそっちのけで…お前がレイプされたときも、連絡入れたらすっ飛んできてよ。あん時は、まださくらが当時相澤さんがサイドキックをしていた月影さんの娘ってだけで助けに来たんだろうけど…」
「………」
「最近、相澤さんがさくらを見る時めちゃくちゃ優しい目をしてるのに気づいた。それは、月影さんの娘って理由じゃないって言うか…よくわかんねえけど…今回の1件は、お前を守りたいって気持ちが強かったんだと思うぜ」
鋭児郎に言われ、私はあの時のことを思い出す。脳無に両腕の骨を粉々に砕かれながらも、彼は最後の力を振り絞って死柄木に襲われそうになった私を助け、さらには絶対に離さないと言わんばかりにぎゅっと抱き寄せていた。…まだ、あの時の感覚が残ってる。弱々しかった…でもそのどこかに力強ささえ感じていた。
ーーー『こいつには、指一本…触れさせん…!』
もはや、その目に敵が映っているのか映っていないのか分からないくらい、消ちゃんの目は光を失っていた。それでも、最後まで私を守ってくれた。
「やっぱすげぇよ…相澤さん。アンタには敵わない」
鋭児郎は、尊敬の意を表した。鋭児郎も昔から消ちゃんとは関わりがあった。