第5章 平和の象徴
その正体は、ヒーロー科3年生の担任…スナイプ先生だった。血を流し、倒れ込む死柄木を庇う黒霧を、更に追い込むヒーローがもう1人。黒霧の体が、なにかに吸い込まれていく。
「13号先生!!」
よかった…!生きてた…!!
「今回は失敗だったけど…今度は殺すぞ…!平和の象徴…オールマイト!!!」
そう言い残して、黒霧と死柄木はワープの中へと姿を消してしまった。
プロが相手にしているもの、戦っているもの、悪の世界…それは私たちはまだ早すぎる経験だった。
「私は…なにも出来なかった…!」
「そんなことは無いさ」
「!!」
マッスルフォームとトゥルーフォームが半々になったオールマイト先生が、私たちを見ていた。
「あの数秒が無ければ…私はやられていた。ありがとう…四楓院少女…緑谷少年…」
「オール…マイト!」
この日、何度目か分からない涙を、私は流した。でもこれは、さっきまで流していた悔しさや自責の涙じゃない。守るべき人を1人でも救うことが出来た…その喜びの涙だった。こうして、ヴィラン襲撃事件は幕を下ろし、現場はまず生徒の安否確認から始まった。
「ここにこれだけプロヒーローが集まるってことは、学校全体に仕掛けてきたってわけじゃなさそうだ。」
「緑谷!さくら!大丈夫か!?」
え!今来ちゃう!?今来ちゃダメだよ鋭児郎!だっていま、オールマイト先生完全にトゥルーフォーム…!バレちゃう!
ドドド…
その時、私たちと鋭児郎の間に大きな壁が出来た。壁を作ったのはセメントの個性を持つ、セメントス先生だった。
「生徒の安否を確認したいから、ゲート前に集まってくれ。けが人の方はこちらで対処するよ」
「そりゃそうだ、ラジャっす!…おーい!ゲート前に集合だってさ!」
鋭児郎は、そう言いながら勝己くんと轟くんのところへ戻って行った。
「ありがとう…助かったよセメントス…」
「俺もあなたのファンなので…このまま姿を隠しつつ、保健室に向かいましょう。…しかしまあ、毎度無茶しますね。」
「無茶をしなければやられていた。それほどに強敵だった。」
「…………。」
.