第5章 平和の象徴
天高く舞い上がった脳無を、オールマイト先生は見逃さなかった。足を掴み、ぶん回し、そして勢いよく地面に向かって投げつけた。その衝撃で地面は蜘蛛の巣のように割れ、クレーターが出来上がり、凄まじい爆風を巻き起こす。
「ヴィランよ…こんな言葉を知っているか!さらに向こうへーーー……Plus Ultraーーーっ!!!」
「きゃっ!」
それは、今までにない大打撃。炎を纏ったかのように見えたその一撃は、脳無の腹部から突き上げるように振り上げられた。殴り飛ばされ脳無は天井を突き破り、雲を切って空の遥か彼方へと姿を消した。私たちに恐怖をもたらした脳無の消え、勝者はオールマイト先生となった。
「コミックかよ…ショック吸収を無かったことにしちまった…!究極の脳筋だぜ…!!」
「デタラメな力だ…再生も間に合わねえほどのラッシュってことか…!」
これがトップ…プロの世界ーー!
「やはり衰えた…全盛期なら5発も打てば十分だったのに…300発以上も打ってしまった。…さてとヴィラン…お互い、早めに決着をつけたいね」
そう言いながら死柄木に目線を向けた。先生がマッスルフォームの時間がもう無い。その証拠に、体から蒸気が出始めていた。けれど、戦いはまだ終わる様子を見せない。
「…衰えた?嘘だろ?完全に気圧(けお)されたよ…よくも俺の脳無を…!チートがぁ…!!」
怒りを抑えられない死柄木は、己の首を掻きむしる。
「おいおい、どういうことだ…全然弱ってないじゃないか。アイツ、俺に嘘を教えたのか…!」
「どうした」
「!」
「来ないのか?クリアとかなんとか言ってたが…」
オールマイト先生はそう言いながら、ギッと死柄木を睨みつける。
「できるものなら、してみろよ…」
「ひぃっ!」
その、獣に睨みつけられたかのような恐怖に、死柄木はたじろいだ。味方である私ですら、恐怖を感じるほどに。
「オール…マイト」
「さすがだ…俺たちの出る幕はねぇみたいだな。」
「緑谷、さくら!ここは引いた方がいいぜ、もう!かえって人質とかにされたらヤベぇし!」
やっぱりあれは、虚勢だわ…土埃に紛れてるけど、変身する時のような蒸気みたいなものが出てる…オールマイト先生はもう…!
「さァ!どうした!」
「くっ…!脳無さえいれば…ヤツなら何も考えず立ち向かうのに!」