第5章 平和の象徴
「ゲホ…ゴホ…っ!」
「オールマイト!?」
「…子どもを庇ったか…」
「ハァ…ハァ…加減を知らんのか」
「仲間を助けるためさ…仕方ないだろ?さっきだって、ホラ…そこの…あぁ、やたらとイレイザーヘッドが助けようとしてたヤツ…」
「ーっ!」
不意に死柄木は、私に指を差してきた。
「アイツが俺に思いっきり攻撃しようとしてきたぜ…?他が為に振るう暴力は美談になるんだ…そうだろ?ヒーロー…俺はなオールマイト、怒ってるんだ。同じ暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされ、善し悪しが決まるこの世の中に!なにが平和の象徴!所詮抑圧のための暴力装置だお前は。暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで、世に知らしめるのさ!」
「……滅茶苦茶だな…そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの…。自分が楽しみたいだけだろ…嘘つきめ…!」
オールマイト先生の言う通り、それを聞いた死柄木の目が不気味に微笑んだ。
「バレるの、早…」
その言葉を聞いて、私たちは完全に戦闘態勢に入った。ここまで聞いて、黙っているわけにはいかない。
「…3対6だ」
「えぇ…靄の弱点は、勝己くんが暴いた…」
「とんでもねえヤツらだが、俺らがオールマイトのサポートをすりゃあ撃退できる!」
勝機があるとは言えない。でも、ここにいる全員で援護が来るまで耐えるしかない。オールマイト先生を戦闘メインに、私たちが援護をすれば僅かながらも勝機はある。しかし鋭児郎の言葉に。オールマイト先生は納得がいかない様子だった。
「ダメだ!逃げなさい…」
「…さっきのは俺がサポートに入らなきゃ、やばかったでしょ」
「それはそれだ、轟少年…ありがとな。しかし、大丈夫!プロの本気を見ていなさい!」
「オールマイト…血が…それに時間だって…っ!」
デクくんは思わず口を閉じた。そう、それは私とデクくんしか知らないオールマイト先生の秘密…今ここでそれを言ってしまってはヤツらに勝つ機会を与えてしまい、ほかの生徒たちの不安を煽ってしまう。しかし、そんな私たちの不安をよそに、オールマイト先生はグッと親指を立てて見せた。まるで私たちに「大丈夫」と言ってくれているようだった。