第5章 平和の象徴
つまりそれは、オールマイト先生を殺す算段が整ったということ。むしろそうだ…人質にとらわれでもしたら足でまとい以下…ヴィランへの憶測よりオールマイト先生を信じるしかない。今私たちにできることはないのだから。でも、彼が戦える時間はそんなにないはず。ここに来た時、消ちゃんと13号先生が話していた内容はオールマイト先生がいないという話だった。その時、13号先生が立てていた3本指はきっと活動限界のことだと思う。対人戦闘訓練のあと、オールマイト先生が言っていた1日の活動時間が3時間と合っている。つまり、どちらにしろ…時間との勝負。これは、私とデクくんだけが知ってる、ピンチ…
「ヤツら、オールマイトをナメすぎだぜ!」
「行けえ!金的を狙えー!」
「すごいわ、オールマイト先生」
皆が声援を送る中、オールマイト先生の動きが止まった。
「ぐっ…そういう感じか!」
バックドロップされたはずの脳無の上半身が、なぜかオールマイト先生の上半身をホールドしていた。それは、ワープ…黒霧と呼ばれた男の個性だった。しかも、掴みどころが悪い。脳無が爪をめり込ませた場所は、オールマイト先生の弱点…5年前に負った傷跡の所だった。
「コンクリに深くつき立てて、動きを封じる気だったか?それじゃ封じれないぜ…?脳無はお前並みのパワーになってるんだから。…いいね黒霧…期せずしてチャンス到来だ…」
「あイタ!!!君ら初犯でこれは…っ…覚悟しろよ!」
「私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが…あなた程の者ならば、喜んで受け入れる。目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目…そしてあなたの身体が半端に留まった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」
もう、人情も何も無い…人間じゃない。あいつらは、化け物だ。
「蛙吹さん…」
「なに、緑谷ちゃん」
「相澤先生担ぐの変わって」
「ケロ?うん…けど、なんで…?」
「デクくん、まさか…!」
ダッ…!
止める暇もなく、デクくんはオールマイト先生のところに向かって走り出した。彼は…オールマイト先生に加勢するつもりだ。いけない…!敵いっこない!!
「デクくん!待って!!!」
「あ、緑谷!四楓院!!」
私もすかさずデクくんを追いかけた。彼の目から溢れる涙を見て、放っておくことができなかった。