第4章 忍び寄る魔の手
消ちゃんも受けて立つと言わんばかりに、走って距離を縮める。そして、距離が完全になくなった瞬間、消ちゃんは男の腹部に肘鉄砲を食らわした。勝負は一見、消ちゃんが先手をとったかと思われた。けど、なにか様子がおかしい。
「ちっ···」
男は、肘鉄砲を間一髪左手の掌で受け止めていた。
「動き回るので分かりづらいけど…髪が下がる瞬間がある」
「ーーー!!」
「1アクション終えるごとだ。そして、その感覚は段々短くなってる…」
「!!!」
「無理をするなよ、イレイザーヘッド…」
その光景を、私は見てしまった。肘鉄砲を食らわしたはずの消ちゃんの右肘が、崩れていくのを…
「相澤先生!!!」
「くっ…!」
消ちゃんは咄嗟に男を殴り飛ばすと、相手から距離を取った。なに…なんなの今のは…!消ちゃんの腕が崩れてる…相手の個性は、細胞か何かを破壊する個性?それとも形そのものを破壊する個性?どちらにしても、これはまずい…!これをチャンスと踏んだのか、ほかのヴィランが消ちゃんに襲いかかろうとしていた。
「させない…!!シーバーム・ショット!」
「ぐはあ!」
「先生、大丈夫!?」
「すまん、助かった…だが、右腕が使い物にならなくなった」
消ちゃんは、崩れた腕を押さえていた。このまま長期戦に持ち込んだら、こちらが負けるのは明白…!なんとか相手の隙をついて決めないと…!
「その個性じゃ集団との長期決戦は向いてなくないか?普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?…君が得意なのはあくまで奇襲からの短期決戦じゃないか?それでも真正面から飛び込んできたのは…」
男は不気味な笑みを浮かべながら私を見た。
「生徒に安心を与える為か?」
何なのこいつ…さっきからこいつから溢れ出ている禍々しい気が尋常じゃない…!
「かっこいいなあ…かっこいいなあ…ところでヒーロー…。本命は俺じゃない…」
その言葉と同時に、背中にこれ以上ない悪寒が走った。振り向いた刹那、私は、目を見開くことしか出来なかった。ヴィラン…プロの世界…私たちはまだなにも見えちゃいなかったんだ。
「逃げろ!さくら!!!」
「ーーー!!!!」
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