第4章 忍び寄る魔の手
「…!」
「みなさんにも、そういう個性がいるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし、1歩間違えば容易に人を殺せる行き過ぎた個性を、個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転、人命のために個性をどう活用するか学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのでは無い…助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上、ご清聴ありがとうございました」
うわぁ…!13号先生かっこいい…!!!私以外にも他のクラスメイトたちも感動したみたいで、拍手喝采が起きた。現場に立っている人だからこそ説得力あるし、感動した。やっぱり、ヒーローってすごい。
「よし、そんじゃまずは…」
消ちゃんが指示を出そうとしたその時…
パッ……
辺りの照明が消え、なかが薄暗くなった。そしてそれとほぼ同時に体中が凍りつくような威圧感を感じた。中央の広間にある噴水…そこから黒い何かが姿を現した。ブラックホールのようなものの中から現れたのは、邪悪なるもの…それも、ただのヴィランじゃない。顔を手のレプリカのようなもので隠し、鮮血の目をした異形の者が中から出てきた。
「ーっ!ひと塊になって動くな!」
消ちゃんも何かを感じたのか、そう指示を出した。
「13号!生徒を守れ!」
「なんだありゃ…また入試の時みたいなもう始まってんぞパターン?」
違う…あれは…!
「動くな!」
そう言って、消ちゃんがゴーグルを付けた。
「あれは、ヴィランだ!」
「「「ーーー!!!」」」
奇しくもそれは、命を救える訓練の時間に私たちの前に現れた。幼き日の記憶が、一気に蘇る。大火災の中、人々を救わんと身を粉にして救助活動をしていたパパとママを襲撃したヴィランたち…。一瞬にして足がすくんだ。なんなの、この禍々しい気配は…
「13号に、イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」
「やはり先日のはクソどもの仕業だったか…」
主犯格の1人であろう、顔に手を付けた男が歩き出す。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたってのさに…」