第2章 波乱の初日
昔は私の方が背が高かったのに、いつの間にか抜かされてその身長差は12センチ...ゴツゴツした手の感触が、彼が男の子なんだと実感させられる。
「...なァさくら...」
「なに?」
不意に声をかけられて見上げると、鋭児郎は何か言いたげな顔をしていた。そして、口を開いたその時ーーー。
『雄英駅...雄英駅です。お降りのお客様はお忘れ物のないようご注意ください』
「あ、着いたよ!行こう鋭児郎!」
「お、おう」
私たちは電車を降りると雄英高校に向かって歩き始めた。歩く都会の街並みの中に、桜並木がズラッと並んでいる桜の雨を降らせていた。地面にはピンク色に染まったように桜の絨毯が広がり、その上を一歩一歩進む。ふわりと風が吹く...乱れた髪を直せばふわりと桜の匂い。この瞬間が春の季節を感じさせてくれる...そしてプロヒーローになって消ちゃんのサイドキックになる...その夢を叶えるための覚悟も。その覚悟を胸に、私は再び歩き出した。
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雄英高への入学倍率が毎年300を超える訳...推薦入学4名を除く一般入試定員は36名。18人ずつでなんと2クラスしかない。そんなたったひと握りに入るため、私は死に物狂いで勉強した。そして今日、ヒーローになるための第一歩を踏み出す。
「1-Aってどこだ?」
「さすが雄英...ヒーロー科の他に普通科やサポート科もあるから、とても広いね...」
廊下を歩き回った末、私たちはようやく1-A組にたどり着いた。
「「ドアでかっ!?」」
それしか出なかった。ドアは私たちの身長の倍以上あった。オールマイトのように筋骨隆々としたヒーローも多いから、それを考えてのこともあるんだろうけど。私たちは、深呼吸をするとドアに手をかけてあけた。
ガラガラ...
その瞬間、既に登校していた生徒たちが一斉にこちらを向いた。一気に来る緊張感...でもこんなんでビビってちゃダメ...。
「お...おはようございますっ!」
「四楓院ちゃーん!おっはよーっ!」
誰よりも挨拶を返してくれたのは、エイリアンのような黒い目にピンクの肌が特徴的な天真爛漫な女の子。
「芦戸ちゃん!同じクラスだったんだ!」
「うんっ!またよろしくね四楓院ちゃん!」
彼女の名前は芦戸三奈ちゃん。