第2章 波乱の初日
(さくらSIDE)
AM8:00
雄英高校までは電車で15分ほど。消ちゃんはやることがあるとかでタクシーをつかまえて先に行ってしまった。私はまだ時間に余裕があったから最寄り駅から電車に乗って向かうことにしたのだけれど、さすがは通勤通学ラッシュ...電車はすし詰め状態で息苦しい。ふと腕時計を見ると、時間は8時7分...電車が駅に着くと、人が一気に降りて車内はだいぶ余裕が出来た。すると向かいのドアから1人の男子学生が入ってきた。同じ雄英高校の制服を着ているその人は、赤い髪にツンツンヘアで見るからにヤンキーだ。でも彼は私の幼なじみ。
「あれ!?さくらじゃん!同じ電車か!」
「うん、おはよう鋭児郎!」
彼の名前は切島鋭児郎。幼稚園からの幼なじみで幼稚園、小学校、中学校、そして高校まで同じになった親友だ。熱血的で「男らしさ」がモットーの鋭児郎の個性は、全身をガチガチに硬くする。攻撃・防御両面で活躍できる「硬化」。その個性のおかげで、私は何度も鋭児郎に助けられた。
「おっす。なんか高校まで同じとか、おれらってホント縁があるよな!」
「え〜...腐れ縁の間違いじゃないの〜?」
「おい!?まあ、またよろしく頼むわ」
冗談でそう言うと、鋭児郎はポカッと優しく頭を小突いてきた。見た目はヤンキーみたいで怖いけれど、鋭児郎は私が出会ってきた男の人の中でも一番まともで優しいと思う。なのに鋭児郎は彼女が出来ても長続きした試しがない。別に他の人に目移りしたとか、体目的とかそんなんじゃない。まえにどうしてそんなに長続きしないのか聞いたら「どうしてもある女が頭から離れないから」らしい。それが誰なのか教えてはくれなかったけど、それを聞いた限り鋭児郎はとても一途なんだと思う。
「またよろしくね鋭児郎!プロヒーロー目指して頑張るぞーっ!」
「お、気合い十分じゃねえか!でもお前、体弱いんだからあんま無茶すんなよ?」
「大丈夫だよー!これを機に体弱いのも改善しなきゃ!」
「悪ぃけど、お前の大丈夫は信用ねえわ」
「ひどいっ!う〜...が、頑張るもん...」
「ま、無茶だけしなきゃ何も言わねえよ」
そう言うと鋭児郎は私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。