第4章 忍び寄る魔の手
「ターボヒーロー、インゲニウムは知っているかい?」
「もちろんだよ!東京の事務所に65人のサイドキックを雇ってる大人気ヒーローじゃないか!!!」
さすがヒーローヲタクのデクくん!なんでも知ってる…!私はヒーローにはそんなに詳しくないから初めて聞いたけど、デクくんが話すあたり凄いヒーローなんだろう。
「あ…まさか!」
「それが俺の兄さ!」
「あからさま!」
「凄いや飯田くん…!!!!」
誇らしく飯田くんは胸を張る。
「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志した!しかし、人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。俺と違って、実技入試の構想に気づいていた上手の緑谷くんが就任するのが正しい。」
その瞬間、初めて笑う飯田くんを見た気がした。
「なんか、初めて笑ったかもね飯田くん!」
「え、そうだったか?笑うぞ俺は!」
私にとっての消ちゃんが、飯田くんにはインゲニウムなんだね。
「そういえば、なぜ四楓院くんはヒーローになりたいと思ったんだ?」
「え!えっとそれは…」
口を開きかけたその時ーーーー。
ジリリリリリリリリリリ…!!!
「これは、警報!?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは、速やかに屋外に避難してください。』
「セキュリティ3ってなに…!?」
「校舎内に誰かが侵入してきたってことだよ!3年間でこんなの初めてだ!キミらも早く避難するんだ!」
隣に座っていた先輩は私たちにそう言い残して走り去って行った。途端に、食堂は大パニック。その場にいた生徒たちが一斉に出口に向かっているため、前に進むどころか、みんな我先にと進むため出口を塞いでしまっている状態だった。私達も出口に向かうけど、周りから押しつぶされ、後ろからも無理やり押されて何度も転びそうになる。
「きゃっ…!」
また誰かにぶつかられ、足がよろけた。
「(倒れる…!)」
人の多さにも酔ってしまい、視界が歪む。体を襲う衝撃に備えてぐっと目を閉じたその時、誰かに腕を引っ張られた。私を引っ張ったのは…
「デクくん!」
「四楓院さん大丈夫?僕から離れないで!」
デクくんはまるで私を周りの重圧から守るように抱き寄せていた。彼自身も特別身長があるわけじゃないし、障子くんや砂藤くんみたいにガタイがいいわけじゃないけど…