第4章 忍び寄る魔の手
ズカズカとやってきた爆豪くんは、私を見るなり。
「ちょっと来い」
「え、わっ…!!」
私の手首を掴んだかと思うと、半強制的に教室から連れ出した。私、爆豪くんを怒らせるようなことしたかな?それか、やっぱり昨日のこと癪に障ったのかな?昨日私が聞き間違えたのか、本当に爆豪くんが言ったのか分からないけど、ぶっきらぼうな「あんがとよ」が頭から離れない。
「あ…あの、爆豪く…」
「勝己…」
「え?」
「勝己でいい」
「今なんて…」
「うるせえ!もう言わねえ!これ以上聞き直してきたら引きずるぞ、ひ弱野郎!」
「ひぃいい…すいませんでしたぁ」
…やっぱり怖い。昨日の小さく見えた背中の面影はもうなかった。引きずられるかのように連れてこられたのは食堂。看板には『LUNCHLUSHのメシ処』と書かれている。中に入ると文字通り、全学年の全科の生徒たちがお昼ご飯を求めて溢れかえっていた。そこにはデクくんや飯田くん、お茶子ちゃんや常闇くん、瀬呂くんの姿もあった。
「あの、ここで何を?」
「メシねぇんだろ、奢ってやる」
「え、悪いよそんなの…!」
「人には自分や仲間を頼れと言っときながら、自分は人に頼れねえってか?」
「うっ…」
それを言われたら返す言葉もない…!というか、昨日のこと覚えててくれたんだ…。なんかちょっと嬉しい。返す言葉も聞かないまま爆豪くんは注文して勘定を済ませてしまった。
「はいよ、日替わり定食2つ!…それにしても珍しいね、爆豪ちゃんが女の子を連れてくるなんて。ガールフレンドかい?」
「うるせえッ!誰がこんなひ弱野郎なんか…!」
「はいはい、顔が赤いからそうなんだね」
「うるせえっつってんだろぶっ殺すぞ!」
食堂のおばちゃんに冷やかされて、爆豪くんの顔は真っ赤だった。その後、私たちは予め確保しておいた席に座る。
「うわあ、おいしそう!」
爆豪くんが注文してくれた日替わり定食。この日はご飯に味噌汁、鯖の味噌煮、ごぼうと人参の煮物、だし巻き玉子と健康メニューだった。
「ありがとう……勝己くん」
「お…おう」
お礼を言われることに慣れていないのか、勝己くんは味噌汁をすすりながら目線をそらした。
「いただきます!」
私も箸をもってご飯を食べ始める。朝ごはんを食べていない私には最高のご飯。