第4章 忍び寄る魔の手
「やばーい寝坊したぁあああ!!!!」
雄英高校に入学して3日目の朝。私は盛大に寝坊した。目覚まし時計にiPhoneのアラーム...保険で2つもかけてあったのに、私は寝ぼけながら両方止めてそのまま二度寝をしてしまった。消ちゃんに起こされてやっと目を覚ますと、時計は既に8時を過ぎていた。私は大急ぎで服を着替える。いつもはポニーテールの髪も、今日は寝癖隠しのために編み込みヘアにした。歯を磨いて顔を洗う。
「さくら、置いてくぞー」
「待ってよ消ちゃん!もう行くからー!」
玄関から催促の声が聞こえてから数分、私はとりあえず身支度を整えて消ちゃんと一緒に学校に向かう。呑気に歩いてなんかいられない。私は全力で駅まで走る。雄英高校に入ってからそれなりに体力はついてきたような気はするけど、相変わらずすぐに息が上がってしまう。心臓も煽り、苦しい。
「無理するなよ」
「無理しなきゃ遅刻しちゃうー!」
「…ったく、しょうがねえな」
「きゃあっ!?ちょ…消ちゃん!?なにを…!!?」
「フードかなんか被ってろ。雄英の奴らに見られたら面倒だ」
「そんなこと言ったって…!」
私は咄嗟に通学バックからタオルを取り出した。それを頭から被る。消ちゃんが何か被れと言った理由。それは、私は今、世間で言う…お姫様抱っこをされてるから...!!!消ちゃんは軽々と私の体を抱き上げてペースを落とさないまま駅まで走る。下から見るアングル...捕縛武器で口元が隠れて目元しか見えない消ちゃんの顔は、なんだか魅力的で思わず魅入ってしまう。何度見ても、かっこいい...。視線を感じてしまったのか、不意に消ちゃんと目線が合ってしまった。
「ん?なんだ?」
「な...なんでもない...!」
消ちゃんは不思議そうな顔をしていたけれど、私はなんでもないと誤魔化した。まだ...言える時じゃない。この気持ちを伝えるのにはまだまだ未熟すぎるから。
駅を降りて学校の近く、私たちは怪しまれないためにここからは別行動をとる事になった。消ちゃんが先に行って、私があとから行く。私たちが同じ屋根の下に住んでいることは、誰にも知られちゃいけない秘密。別にやましいことをしているわけじゃないけど、教師と生徒が同じ屋根の下に住んでいるなんてバレたら、事情はどうあれ世間から見たら大問題なのだから。