第3章 自分に打ち勝て
「あなたの言う通り、私は力がありながら生まれつき体が弱いの。でも、ヒーローになりたいって思った。...デクくんから聞いたわ。爆豪くんは小さい頃から誰よりもオールマイトへの憧れが強かったって。」
「.......」
「私もそうなの。私の両親はプロヒーローだったんだけど、私が小さい頃ヒーロー殺しに殺されてしまった...巷では有名な夫婦ヒーローだったから新聞にも大きく取り上げられてた。それが、幼い日の私にとっては苦しみしかなかった。」
「...パヒューム・ロックとエンジェル・スター...それがてめぇの親か」
「ええ...そうよ。私の中では両親が最強のヒーローだった。」
でも、時が流れるにつれて、憧れは現実に生きるヒーローへと変わっていった。そう、いつでも私の目の前にいる黒い背中...黄色のゴーグルを付けて捕縛武器をなびかせ、闇夜に紛れて敵を葬る静寂なるヒーローに...。
「私も、憧れてるヒーローがいるの。私の夢は、ヒーローになって世界の平和を守ること...そしてその人のサイドキックになることなの。夢の大きさは私の方が小さいかもしれないけど、でも同じヒーローになりたいっていう夢がある以上は、私は爆豪くんとも仲良くやっていきたいの。さっき、あなたの本音を聞けて嬉しかった。何か困ったことや悩み事があったら、私やクラスメイトのみんなを頼って。
ーーー爆豪くんは、ひとりじゃないんだよ?」
「ーーーっ!!!」
まだ涙が乾ききっていない爆豪くんの目が大きく見開かれた。その拍子に、ついに収まりきらなくなった涙は頬を伝う。爆豪くんは咄嗟に背中を向け、ゴシゴシと袖で涙を拭う。
「おい...」
「...?」
不意に呼ばれ、首を傾げる。
「てめぇ...名前は?」
「四楓院さくら...」
「.....あんがとよ...さくら」
「え?」
聞き間違いだろうか...今、確かにありがとうって。聞き直す暇もないまま爆豪くんは静かに帰っていった。けどその時。
「いたぁあああ!爆・豪・少年!!!」
後ろから颯爽と現れたのはオールマイト先生だった。
「言っとくけど、自尊心てのは大事なもんだ。キミは、間違いなくプロになれる能力を持っている!キミはまたまだまだこれから…」
「離してくれオールマイト、歩けねえ」
「ん?」