第3章 自分に打ち勝て
「かっちゃん!かっちゃん!!」
「...ァア?」
2度目の声で、爆豪くんは、やっと進めていた足を止めた。
「これだけは、君には言わなきゃいけないと思って...僕の個性は、人から授かったものなんだ」
「あ?」
「誰かからは、絶対に言えない!言わない...でも...コミックみたいな話だけど、本当で...オマケにまだろくに扱えもしなくて...全然ものに出来てない借り物で...だから使わずに君に勝とうとした。けど、結局勝てなくてそれに頼った!僕はまだまだで...だから、だから...いつかこの個性をちゃんと自分のものにして、僕の力で君を超えるよ!」
「ー!...なんだそりゃあ...借り物?ワケ分かんねえ事言って、これ以上コケにしてどーするつもりだ...!だからなんだ!今日、俺はてめぇに負けた!そんだけだろうがっ...!」
いつもなら、黙れクソナードが!とかぶっ殺すぞ!とか言う爆豪くんが、今日ばかりは、グッと唇を噛み締めて声を震わせていた。
「氷のヤツ見て敵わねえんじゃって思っちまった!...クソっ!ポニーテールのヤツの言うことに、納得しちまった!クソ...クソ!クソ...っ!なァ...てめぇもだデク!!」
「ーーーっ!」
キッとデクくんを睨みつけた爆豪くんの目には、今にも溢れそうなくらいの涙が溜まっていた。
「こっからだ!!!俺はこっから!いいか...俺はここで1番になってやる!
...俺に勝つなんて...二度とねえからな!クソが!」
爆豪くんは、乱暴に涙を拭いながら正門に向かって歩き始めた。私はなぜか彼を放ってはおけなくて、力が抜けたデクくんをそこに残して爆豪くんを追いかけた。立ち去る背中は、相変わらず小さくて...自分の未熟さを思い知り、現実を突きつけられた。今まで自分は強いと思っていた彼にとってはこの上ない屈辱なのかもしれない。そして、慰めや同情なんて以ての外虚しくなるだけかもしれない。でもーーー。
「爆豪くん、待って!」
「ンだよ、ひ弱野郎が...」
「なっ...そんな言い方!...でも、今は事実だから否定はしないわ。」
私はゆっくりと爆豪くんに歩み寄る。