第3章 自分に打ち勝て
先生から聞いた話はこうだ。
オールマイト先生は元々無個性でこの世に生まれた。けれど今のデクくんみたいにヒーローへの志があった。そんなとき、彼の前に志村と言う人が現れて、その人からある力を譲渡された。それが、ワン・フォー・オール。個性を譲渡する個性。譲渡を繰り返すことで力を蓄積するという特殊性があるため、その力は莫大。使いこなすにはそれなりの強靭的な肉体と体力が必要となる。そして、さっきエレベーターの中で聞いたオールマイト先生の体力の憔悴。限界を感じ始めた先生は、後継者を探すため雄英の教師をすることになった。でもその前に、彼らは出会った...若き日の自分を見ているかのようなデクくんに...。
ーーー無個性でも、ヒーローになれますか!!!
ーーー君は、ヒーローになれる。
それが彼らの始まりだったという。この話を聞いて、デクくんが個性を使いこなせていない理由や、爆豪くんが個性を隠され続けてたと言い張る理由がわかった。デクくん、無個性で、しかもとても短い期間の間に体を作り上げて今ここにいるんだ...人の何倍も努力しなきゃいけない。それは、想像を絶する道のりになる。それでも彼は、オールマイト先生のようなヒーローになるために、こんな怪我を繰り返しながら少しずつ前に進んでる。
「トップで胡座かいていたいってわけじゃないだろうがさ。そんなに大事かね...ナチュラルボーンヒーロー。平和の象徴ってのは...」
「...いなくなれば、超人社会は悪に拐かされます。これは、この力を持った者の責任なのです。」
「それなら尚更、導く立場ってのをちゃんと学びんさい。」
「はい。」
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時計が15時55分をさした頃、出久はようやく目を覚ました。目の前に広がる白い天井と、点滴の音。自分が保健室で眠っていたと気づくのに、そう時間はかからなかった。そして、聞こえる音がもう一つ。スースー ...と寝息が聞こえる方に目を向ける。そこにいたのは、出久の手に触れたまま、出久のベッドに頭を載せて眠るさくらの姿だった。
「え、四楓院さん...!!!!」
出久は思わず飛び起きてしまった。そこへリカバリーガールがやってきた。
「目が覚めたかい?」
「リカバリーガール...!」