第3章 自分に打ち勝て
もう、振り返らない。弱音も吐かない。強くなりたいなら...多少の犠牲はつきものなんだから。
「先生、私はたとえ血を吐いてもがこうとも、この夢は諦めません。必ず、プロヒーローになってみせます!」
「夢は諦めない...か。教師として生徒の夢の架け橋になろう。厳しく辛い道のりになるだろうが、私は全力で君をサポートしよう」
「はい、よろしくお願いします」
話が一通り終わった頃、エレベーターが開いた。その瞬間にオールマイト先生はいつもの筋骨隆々の姿になってエレベーターを降りた。
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「入学してまもないのに、もう3度目だよ?!なんで止めてやらなかったオールマイト!」
「申し訳ございません、リカバリーガール」
「私に謝ってどうするの!」
保健室の先生、リカバリーガールは頭から湯気を出してプンスカとオールマイト先生に叱責する。見た目は小さくて可愛らしいおばあちゃんなんだけど、彼女の個性は本当にすごい。
「疲労困憊の上、昨日の今日だ。一気に治癒してやれない。応急手当はしたから点滴全部入ったら、日を跨いで少しずつ活性化していくしかないさね。まったく...力を渡した愛弟子だからって甘やかすんじゃないよ」
「返す言葉もありません...彼の気持ちを汲んでやりたいと、訓練を中断させるのを躊躇してしまいました。して、その...あまり大きな声でワン・フォー・オールの事を話すのはどうか...!」
「力を渡した?何の話ですか?」
「ギク...!!!」
そこまでの話を静かに聞いていた私は、疑問に思った事をつい口に出してしまった。リカバリーガールやオールマイト先生は、私が一緒に来ていた事をすっかり忘れてしまっていたようで。なにか、聞いてはいけない話を聞いてしまった気がした。
「もうその姿まで見られてるんだ。ここには私らしかいない。その子は口が固そうだし、話したらどうだい」
「...私の個性、ワン・フォー・オールの件はリカバリーガールと校長、そして親しき友人、あとはこの緑谷少年だけだ。君も、一切他言無用で頼む」
「わかりました。」
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