第3章 自分に打ち勝て
職員用エレベーターに乗り込んだオールマイト先生は、すぐさま扉を閉めようとしたけれど、私には無意味。皮脂の力で無理矢理エレベーターに乗り込んだ私は、衝撃の光景を目にする。
「ーーー!!オールマイト...先生?」
そこにいたのは、筋骨隆々なオールマイト先生ではなく、痩せ細ったガリガリの男の人。でも、着ている服は間違いなくオールマイト先生のシルバーエイジのコスチューム。
「はぁ...出来ればこの姿は見られたくなかったんだがね...。見られたついでだ四楓院少女。間違ってもネットには書き込むな。そして、この事は一切他言無用で頼む。この事を知っているのは雄英の先生方と、一部の人間...あと緑谷少年だけだ」
「え、デクくんも先生のその姿を?」
「あぁ。彼との詳しい事情は話せないが...まずはこれを見てくれ。」
先生が上のコスチュームをまくる。そこにあったのは、胸に大きく刻まれた深い傷跡。
「5年前、敵の襲撃で受けた傷だ...呼吸器官半壊、胃袋全摘。度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や、1日約3時間程なのさ。」
「5年前の大きな戦いといえばたしか毒の...」
「緑谷少年にも同じ事を言われたよ。だが、あんなチンピラにやられはしないさ。...これは世間に公表されていない。公表しないでくれと私が頼んだ。人々を笑顔で救い出す...平和の象徴は決して悪に屈してはいけないんだ。私が笑うのはヒーローの重圧。そして、内に沸く恐怖から己を欺くためさ。」
「!!!」
「プロは、いつだって命懸けだよ。力がなくとも成り立つとは、とてもじゃないが口にできないね」
「...確かに、そうかもしれません。」
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