第3章 自分に打ち勝て
3回戦はヒーローチーム常闇くんと梅雨ちゃん。ヴィランチームは瀬呂くんと鋭児郎だった。
「アイツの前でカッコ悪ぃとこは見せらんねえぜ!この勝負、絶対ェ勝つ!」
鋭児郎は体全体を硬化し、拳と拳を合わせた。敵が来るのを待ち構えながら、瀬呂くんは肘からテープを出すと核の周りを囲い、敵が通れないようにした。
「行っけー鋭児郎!!」
つい幼なじみという贔屓目で応援してしまった。でもこちらの声はマイクを使わない限り聞こえることは無いから、この勝負は鋭児郎の根性と瀬呂くんとのナイスなコンビネーションで終えた。
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その後も訓練は続き、全てのチームが終わった頃にはもう帰りのHRが始まる30分前だった。
「お疲れさん!緑谷少年以外は大きなケガもなし!四楓院少女も体力面で心配な面があったが、無事訓練を終えた!みんな、真剣に取り組んだし初めての訓練にしては上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業...なんか拍子抜けというか...」
「あはは...」
梅雨ちゃんの言葉に、みんなが首を縦に振った。私は苦笑いを浮かべるしかなかった。消ちゃん、みんなから怖がられてるよ...
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻りィイイィィィ~...」
「うわ、オールマイトすっげえ速っ!」
「なんであんなに急いで...」
「かっけぇ...」
男子勢が感動しているなか、私は床に皮脂をばらまく。
「?なにしてんだよさくら」
「私もデクくんの様子見てくる。鋭児郎は、みんなと一緒に先に教室に戻ってて」
「あぁ、分かった!」
鋭児郎にそう伝えると、私も先生の後を追う。けど、普通に走ってあのスピードについていけない。体力テストの時みたいに肌の摩擦を消して皮脂の力で滑るように走る。しばらくすると、目線の先に軽やかに速く走るオールマイト先生の背中が見えた。
「あ、オールマイト先生!」
「なっ...四楓院少女!教室に戻りなさいと伝えたはず!」
「私もデクくんの様子が気になって...」
「い...いや、ここは私ひとりで十分だ!キミは教室に...!」
シュー...
何か水蒸気のようなものがオールマイト先生の体から出てきた。