第3章 自分に打ち勝て
常闇くんの言葉に、梅雨ちゃんが静かにツッコんだ。訓練が終わったあと、オールマイト先生は現場に向かった。デクくんはそのまま保健室へ運ばれた。そして、まだその場で呆然と立ち尽くす爆豪くんに歩み寄ると、その震える肩に手を添えた。
「戻るぞ爆豪少年。講評の時間だ。勝ったにせよ、負けたにせよ...振り返ってこそ経験ってのは生きるんだ。」
そう、これはあくまで訓練。勝ち負けは関係なく、これから力をつけていくための基礎訓練。だけど、負けず嫌いの人からしたら、負けたくない勝負なのかもしれない。...私もいつか、守ってもらってばっかじゃなくて、この手で誰かを守れるヒーローになりたい...デクくんみたいに体を張ることはできるか分からないけど、でもデクくんを見習わないと。
そして講評の時間。1年A組の生徒が集められた。
「まあ...つっても、今戦のベストは飯田少年だけどな!」
「な、えっ!?」
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
「ん〜そうだな〜。なぜだろうなあ〜...わかる人!!」
梅雨ちゃんの言葉に、オールマイト先生が逆にみんなに問いかけた。
「はい、オールマイト先生。それは飯田さんが1番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程、先生が仰っていた通り屋内の大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様、受けたダメージから鑑みても、あの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。麗日さんは...中盤の気の緩み。そして、最後の攻撃が乱暴過ぎたこと。ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為はできませんわ。
相手への対策をこなし、核の争奪をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは訓練の甘えから生じた反則のようなものですわ。」
ヤオモモちゃんの推理らしからぬ説明に、誰もが言葉を失った。
「ま...まあ飯田少年もまだ硬すぎる節はあるわけだが、まあ正解だよ!」
「常に下学上達。一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので」
八百万百。ヒーロー科の推薦入学者...4人のうちの1人。
「よし、みんな場所を変えて第2戦を始めよう。今の講評をよく考えて訓練に挑むように!」
「「「はい!」」」