第3章 自分に打ち勝て
鋭児郎の言葉に、オールマイト先生はどこか悩ましい表情をしていた。それはまるで、教師として止めなければならないけど止めてあげたくない。そういった表情だった。けれど先生は、先生としての立場を全うするため、マイクを手に取った。
「「でやぁあぁぁぁぁーっ!!!!!」」
「双方...中止...」
「麗日さん行くぞ!!!」
無線でお茶子ちゃんにそう伝えると、デクくんは拳を作った。
「かっちゃん...僕はまだタイマンじゃ君には勝てない!でも...!!」
―――ヒーローになりたいんだ!!!
「SMASH!!!!」
「なっ...!!!」
ぶつかり合うかと思われた拳。けれどそれは、デクくんによって免れた。デクくんが発動したパワーは、わざと天井へと振り上げ、起きた爆風と衝撃によって何層もの風穴を作った。その瞬間、突き抜けた階層からお茶子ちゃんの声が響く。
「即興彗星ホームラン!!!」
そして、飯田くんの叫びも。
「あああ!核ぅうう!!!」
それを見上げながら聞いていた爆豪くんは、怒りに満ち、言葉を震わせながらデクくんを睨みつけた。
「そういう.......ハナっからてめぇ...やっぱ舐めてんじゃねえか.....!!!」
「使わない...つもりだったんだ」
「ーーーっ!!!」
土煙が晴れ、その向こうから現れたデクくんを見て、私は思わず悲鳴をあげそうになった。そこに居たデクくんは...
「使えないから...体が衝撃に耐えられないから...相澤先生にも言われて...たん...だけど...これしか思いつかなかった」
右腕全体が鬱血し、左手はやけど。立っているのがやっとの姿だった。さすがの爆豪くんもその姿には言葉をなくし、ただ驚いて見ていることしか出来なかった。入試試験で彼がロボを殴り飛ばした所を見ていないのなら、体への負担がここまで酷いものとは思わなかったのだろう。爆豪くんは、衝撃を受けていた。やがて、タイムアップの音が鳴った。
「屋内対人戦闘訓練...ヒーローチーム!WIN!!!!」
その瞬間に、デクくんは力無しにその場に倒れた。爆豪くんは、呆然と立ち尽くしたままだった。
「なんだよ、こりゃあ...負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてらぁ...」
「勝負に負けて、試合に勝ったというところか...」
「訓練だけど」