第3章 自分に打ち勝て
背中に大打撃をくらってふらつこうとも、爆豪くんの攻撃は止まらない。
「ホラ行くぞ!てめぇの大好きな右の大振り!!」
「ガハ...!!!」
そして、トドメだと言わんばかりにデクくんの右腕を掴むと振りかぶる。
「デク...てめぇは俺より下だ!!」
「ガッ...!!!」
最初デクくんからされた背負投げを、倍返しで返していた。攻撃が終わればまた次の手を...爆豪くんはデクくんに考える暇すら与えないつもりだ。
「リンチだよこれ!!テープを巻きつければ捕らえたことになるのに!」
「ヒーローの所業に非ず...」
「緑谷もすっげぇって思ったけどよ...戦闘能力に於いて爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ」
その姿からは、恐怖しか感じられないくらい爆豪くんは狂気に満ちていた。それを見たデクくんも怯み、動けない状態だった。そして命の危機を感じたのか、デクくんは本能で咄嗟に足を動かした。逃げる選択肢を選んだ。
「逃げてる!」
「男のする事じゃねえけど仕方ないぜ。しかし変だよな…なんで」
鋭児郎の言葉に皆が目を向けた。何が変なのだろうか。そんな気持ちを持ったまま私たちは再びモニターに目を向けた。
「なんで個性使わねえんだ!俺を舐めてんのか!?ガキの頃からずっと!!そうやって!!!」
「違う...違うよ...」
「俺を舐めてたんかてめぇはァア!!!」
「君が.....君が凄い人だから、勝ちたいんじゃないか!!勝って!!超えたいんじゃないかバカヤロー!!!」
舐めるなと言い張ってきた爆豪くんに、デクくんは涙を浮かべながら訴えた。しかし爆豪くんの気持ちが揺らぐはずはなく、相変わらずの狂気に満ちた表情でデクくんを見下す。
「そのツラやめろや...クソナード!!!」
ヒーローになる以外で初めて見せた表情...そう、デクくんが見据える未来にこれは必須なんだと思う。
「DETROIT...!」
デクくんがついにその力を発揮した。右腕に走るパワーの流れ。それは、彼の身体能力を格段に上げる力...けれど代償は大きく、使う度にその骨は砕け、使い物にならなくなる。いや、その前に爆豪くんの爆発とデクくんのパワーがこんな狭いところでぶつかりあったら、2人はおろか飯田くんやお茶子ちゃん...この建物自体が完全に吹き飛ぶ!
「先生!!ヤバそうだってコレ!先生!!」