第3章 自分に打ち勝て
大技が使えるのは一度きりである上に、さらには自分の体が激しく損傷する。その姿はまるで、個性が目覚めたばかりの子どものようで、全くといいほど使いこなせていない。彼自信1番よくわかっているのだろう、デクくんは逃避体制に入った。
「待てコラ!デクッ!!!」
迷路のような建物のなかを、まるでイタチごっこのように走る2人。何通りもあるその廊下を何度も行き来し、痺れを切らした爆豪くんは大声で叫ぶ。
「なァ、おい!俺をだましてたんだろ?楽しかったかずっと!!!
...ァア゛!?随分派手な個性じゃねえか!...使ってこいや...俺の方が上だからよォ!!!!」
イライラマックスの爆豪くんは、両手に小さな爆発を起こさせながらそう叫んだ。
「なんかすっげえイラついてる!こっわ...!!!」
爆豪くん自身既に死ねとかぶっ殺し甲斐があるとか言ってるから、彼が怖いのは今日始まったことじゃないけど...
「オールマイト先生」
「ん?なんだ、四楓院少女」
「爆豪くんって、なんであんなにデクくんに当たりが強いんでしょうか」
私の素朴な疑問に、オールマイト先生はモニターを見たまま口を開く。
「...爆豪少年は緑谷少年から聞いた感じ、自尊心の塊なんだろうが...肥大しすぎている。彼のなかで、緑谷少年を認めたくない何かがあるのかもしれない」
「認めたくない何か...?」
「今の緑谷少年は、個性をうまく扱えない分持ち前の知識と判断力、洞察力を駆使しながら戦っている。爆豪少年はその逆で、個性そのものは自分の体のように操っているが、緑谷少年に対する腹立たしさで判断力が欠けてしまっている。彼らの話を聞いている感じだと、どうやら爆豪少年は緑谷少年をずっと無個性だと思っていたのだろう。しかし、本来は4歳までに覚醒するはずだった個性が急に覚醒したことで、今まで自分は騙されていたと確信したのかもしれないな」
「つまりこれは、今爆豪くんが1人で暴走してるだけで、飯田くんとは全く連携が取れてないってことですよね?」
「そうなるな」
「スマートじゃないね...」