第3章 自分に打ち勝て
オールマイト先生の言葉に、思わず目を見開いてしまった。どこかで聞いたことのあるセリフだった。そう...それは昨日消ちゃんが話していた内容と同じだった。
『...自然災害、大事故、そして身勝手なヴィランたち..いつどこからくるか分からない厄災...日本は理不尽にまみれている。そういうピンチを覆していくのがヒーロー...』
プロヒーローの人達は、ピンチだからといって諦めたりはしない。そう、かつてオールマイト先生が大災害から1人で1000人を救ったという伝説があるように、人々を不安にさせてはいけない。だからオールマイト先生は現場にいる時も必ず笑って「大丈夫」と市民に声をかける。
「それに、相澤先生にも言われたろ?アレだよ」
「あ...!」
それは、体力テストの時に言われたアレだ...さらに向こうへーーー。
「「「PlusUltra!!!」」」
オールマイト先生の声掛けで、皆が声を揃えて叫んだ。
「ムッシュ...爆豪が...」
「ん?」
青山くんの声掛けに、皆がまたモニターに目を向けた。しばらく動きを止めていた爆豪くんが、爆風の力を使って勢いよくデクくんに蹴りを与えた。咄嗟に腕で防いだデクくんは、お茶子ちゃんを先に行かせた。
『麗日さん、行って!!!』
『余所見か!余裕だなァ...!!!』
「あっ!」
その瞬間、私は見逃さなかった。モニターに映っていたのは、蹴りを入れた爆豪くんの足に確保テープを巻き付けたデクくんだった。あのやり方は、個性を覚醒したときの消ちゃんと似ていた。でも爆豪くんが大人しく捕まるわけがなく、次は右の大振りで殴りかかった。けれどデクくんは、まるでそれを読んでいたかのように躱した。
「すげぇな、アイツ!!」
「個性使わず入試1位と渡り合ってる!!」
「デクくん、すごい...!!!」
元々ヒーローへの憧れは人の倍以上。さらにはさっき爆豪くんに言った、凄いと思ったヒーローは全部ノートに書いていると言うセリフからして、かなりのヒーローオタク。それは爆豪くんも例外じゃない。デクくんは個性の勝負じゃなくて、咄嗟の判断力と今まで頭に染み込ませたオタク知識で戦ってる。爆豪くんに対しては特に幼なじみというだけあって、次はどんな手で来るのか分かっているように見えた。けれど、これは戦闘訓練。勝たなきゃ意味が無い。それならデクくんは不利。