第3章 自分に打ち勝て
「デクくん、頑張ってね!」
通りすがりにそう声をかけると、デクくんはいつものように緊張した面持ちで答えた。
「うん!ありがとう四楓院さん!」
「モニタールームで応援してるからね!」
その言葉を残して、私はモニタールームに向かった。薄暗いモニタールームのなかには、屋内に設置されたいくつものカメラから投影されるモニターが設置されていた。オールマイト先生はAチームとDチームのところにいた。
「ヴィランチームは、先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチーム潜入でスタートする!飯田少年、爆豪少年...ヴィランの思考をよく学ぶように。これはほぼ実践...ケガを恐れず思いっきりな!」
「はい!」
「度が過ぎたら中断する」
「はい!」
デクくん、大丈夫かな...彼の個性は使うにしてもリスクがあるし、真っ向から爆豪くんと戦うのは不利。かといってお茶子ちゃんは無重力だから、どっちかと言えば戦闘向けじゃない。逆に爆豪くんは爆発とそれによって起きる爆風が強いし、飯田くんのエンジンも使い方によっては敵を欺くには強い武器になるかもしれないし。この演習、どうなるんだろう。
「それでは、Aコンビ対Dコンビによる屋内対人戦闘訓練スタート!!」
オールマイト先生の合図で、演習は始まった。
「さァ、キミたちも考えて見るんだぞ?」
まずモニターに映し出されたのはヒーローチーム。デクくんとお茶子ちゃんは、建物の窓から潜入した。息を潜め、足を忍ばせながら建物の中を歩いていく。死角が多いだけあって、進むのにも慎重になっている。そう、訓練といえど、ヴィランはいつどこから攻めてくるか分からない。だからこそ、辺りへの警戒心は欠かせない。しかし、その時。
「あっ...!!」
通りの死角から突然個性を発動させた爆豪くんが、デクくんとお茶子ちゃんに奇襲をしかけてきた。凄まじい爆発と共に、デクくんは咄嗟にお茶子ちゃんを庇った。その衝撃で、顔を覆っていたマスクの半分が焼けて無くなっていたけどデクくん自体はけがはないようだ。砂埃を振り払って、爆豪くんはデクくんを見下すような形で睨みつけている。
「こらデク...よけてんじゃねぇよ...」
「かっちゃんが敵なら...まず僕を殴りに来ると思った!」
始まって10分も経たないうちの出来事に、みなは驚くしかない。