第2章 波乱の初日
「うー...鳴るなおなか〜...」
その姿を見た消太はレンゲにチャーハンをすくうと、それをさくらに差し出した。
「ほらよ。ひとくちくらいじゃ太りゃしねえよ」
「じ...じゃあひとくちだけ」
さくらは消太の隣に座ると、髪を耳にかけてレンゲに口を寄せる。その何気ない動作に、消太は一瞬胸が跳ねたがすぐに振り払った。
「ん〜おいしすぎ〜!やっぱ私料理の天才かも!」
「俺もつくづくそう思うよ...お前の作るメシはうまい」
そう言うと消太は通勤カバンからお弁当箱を取り出した。いわゆる洗い物。さくらが蓋を開けると、なかは米粒1つ残っていない。それがこの上なく嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「消ちゃん...全部食べてくれたんだ...」
「あぁ、隣でマイクが嫁もらったのかとかうるさかったがな」
「マイク先生、高校からの同級生だもんね...気になるのかもね」
「上手く流しといたが、アイツの相手は疲れる」
「あはは...」
さくらは苦笑いを浮かべた。プロヒーロー プレゼント・マイク(本名山田ひざし)と消太は雄英高校時代の同級生。消太のプロヒーロー名 イレイザーヘッドを考えたのも実はマイクだ。2人の性格は昔から変わらないようで、それでもどこか仲がよさげ。長い付き合いだけあって、結婚とかの心配もしているようだが消太曰く「結婚してないやつに結婚の心配されたくない」らしく、軽くあしらっているらしい。しかしマイクも消太も30歳になり、そろそろ自分たちの将来も考えていかないと行けない歳となった。しかし、プロヒーローの仕事に教員の仕事...やる事は山積みで、女と遊んでいる暇などこれっぽっちもない。
「ま、どの道結婚するならするで、女には負担かけるだろうよ...プロヒーローは常に死と隣り合わせ。安心した将来を過ごしたいなら、普通の男とした方がいいさ」
「私は...ヒーローがいいな」
「.....?」
「自分の旦那さんがヒーローなら素敵だし、なにより人のために命をかける人ってどんな職業よりもかっこいいと思う...私も誰かのために命をかけたい。だから雄英に入ったの」
「親御さんの影響か...」
「うん...パパとママは、私の中では最強のヒーローなの。だから、私もパパやママに負けないようなヒーローになりたい」