第2章 波乱の初日
ーーー親がヴィランに殺されても、そう思ってもらえるなんて親冥利に尽きるだろ...パヒューム・ロックさん...
消太は心のなかで亡きヒーローに声をかけた。かつて自分がサイドキックをしていたプロヒーロー パヒューム・ロック。本名四楓院月影。それがさくらの父の名前だ。
「...でも、“今”の私の中での最強のヒーローは.....消ちゃんだよ」
「.....!!!!.....そうか...」
屈託のない微笑みを見せたさくらに驚いたが、どこか嬉しさも感じていた。昔は名前を呼びながら追いかけて来てた子どもが、今は自分を目標として一歩一歩と歩き始めている。期待半分、不安半分...生まれつき体が人より弱い上に、その外見で狙われることも多い。心配もあるが、今は彼女の保護者として静かに見守っていこうと消太は思った。ふと時計を見れば、時刻は夜中の2時を回っていた。話しているうちに、時間を忘れていた。
「もう遅いから寝ろ。明日も過酷だぞ」
「はーい...おやすみ消ちゃん」
「おう」
既に消太の目線はパソコンに戻っていた。そのせいで、気づかなかった。自分の頬に柔らかい何かが触れていたことに。気づいた時には既に遅く、その犯人は何事もなかったかのようにリビングを出ていった。
「ーーーっ!」
思わずそこに触れる。一瞬思考が停止して何が起こったのか理解するまで時間がかかった。やがて顔が熱くなり、消太は1人で恥ずかしそうに頬を赤らめたままカリキュラム作成のラストスパートにかかったのだった。
これくらい、許してくださいよ月影さん...
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