第10章 突っ走れ期末テスト!
「あいつも言うようになったな」
自分の妹…否恋人の成長ぶりに嬉しさを感じながらも、相澤は直ぐに気持ちを切替える。その時奥から3人の黒子が現れた。
「布かよ…確かに見えなきゃ消せねえが…デメリットの方がでかいだろソレ」
相澤は大きく振り、捕縛武器を巻き付けた。しかしその時ーーー。
「…マネキンかい」
布の下から八百万と体力が回復した四楓院が姿を現した。八百万の後ろにあったのはカタパルト。そこから現れたのは、相澤の捕縛武器に似た布。相澤の視界を遮る。
「轟さん!地を這う炎熱を!四楓院さんは火力アップの皮脂を!」
ゴォ…!
「先生相手に個性での攻撃を決め手にするのは極めて不安……ですから…ニチノール合金をご存知ですか?加熱によって瞬時に元の形状を復元する……形状記憶合金ですわ!」
形状記憶合金は、相澤をしっかりと捉え、身動き取れなくした。
「………大したもんじゃないか」
八百万は相澤の手にカフスを付けた。これにて決着は着いた。
「こんなすんなりいくか…」
「いえ…しかし…………カタパルトの発射で私…ミスを犯しました。先生は気づいた上で距離を取った…あの隙に防げたハズなのに……先生は故意に策にのったよう見受けられました」
「隣の轟と四楓院を警戒しただけだ。お前のは見えたが轟と四楓院は布をかぶってたからな。轟単独で凍らせに来るか、四楓院の皮脂を使って最大火力でくるかと考えた。俺が最善手だと思い退いて、それがお前の策略通りだったわけだ」
「ーーー…!」
八百万は口元を抑えた。そして目には光る何か…
「……どうした?気持ち悪いか…吐き気には足の甲にツボが……」
「なっ、なんでもありませんわ!」
「はぁ…なんか、一気に疲れて…立てないや…」
四楓院はへなへなとその場に座り込んでしまった。
「四楓院、ばあさんとこへ行ってリカバリーしてもらえ」
「はいっ」
『報告だよ!条件達成最初のチームは轟・八百万・四楓院チーム!』
「よく頑張った」そう言われた気がしたの。言葉にしなくても、彼が私の目を見て…。相変わらず体はボロボロだけど、また少し自分が強くなれた気がして嬉しかった。一歩進んだ人、壁に阻まれた人…悲喜交々の中、期末実技試験が終了する一方、奴らが三度動き出そうとしていた。