第10章 突っ走れ期末テスト!
ドゴォ…
街に見立てた試験会場に土煙が舞う。それは四楓院が相澤に吹っ飛ばされた衝撃によって起きたものだった。後遺症があるとはいえさすがはプロヒーロー。弱点をついても手も足も出ないのだ。
「まだやるかい?」
「当然…」
衝撃で口の中を切った四楓院は、唾を吐き捨てるように血を吐いた。
「私が負けるのは構わないけど、チームが負けるのは譲れないので!」
彼女は本当に強くなった。体育祭前…たった2週間の肉体改造。血反吐を吐く思いをしただろう。しかしそれを乗り越え、体育祭でも結果を残し、自信もついてきている。しかし体育祭の発作を見る限り、まだ完全な体じゃない。いつまた発作を起こすか分からない。普段なら気を遣うところだが、今は生徒と教師の関係…贔屓をする訳にはいかないのだ。そちらがこちらの弱点を突いて来た以上、こちらも突かせてもらう。
相澤は取っていた距離を一気に詰めた。
「!!!」
それは一瞬の出来事だった。相澤はヒーロー殺しとの戦いで負傷した四楓院の手を手首から握り上げた。
「いっ…!!?」
まだ塞ぎきっていない手から、骨の軋む音が聞こえた。
「(まずい…砕けちゃう…!)」
しかし相澤は容赦なかった。なぜならこれは戦闘訓練。さすがに殺しはしないが、裏でリカバリーガールが構えている以上怪我などお構い無しなのだ。四楓院は相澤の顔面に頭突きをお見舞した。
「ちっ…」
四楓院は相澤の手から離れられたが、負傷していた手はさらに使い物にならなくなった。
「…今日の晩御飯、消ちゃんが嫌いな物ばかり作ってやるんだから」
「試験中だぞさくら…」
お互いボソリと話すと、一気に距離を詰め、勝負は肉弾戦に切り替わった。相澤が回し蹴りをすると四楓院は咄嗟にかがみ、片足立ちになった相澤の足を引っ掛けた。しかし相澤も負けじと、屋根に手をついて体勢を立て直す。
「なっ…!」
ドゴォ…!
四楓院は地面に吹っ飛ばされた。背中から落ちたせいで肺の中にあった空気が全て吐き出された。
「…がっ…!!」
「捕縛したら終わりだ」
相澤が捕縛武器を放ったそのとき、突然相澤の目の前に大量のマトリョーシカが現れた。
「んだこれ…」
その瞬間それは爆発し、彼の目の前が光に包まれた。
「くっ…これは、閃光弾!」