第10章 突っ走れ期末テスト!
しかし今目の前にいる、入学当初は誰よりも弱かった彼女の言葉が心に染みた。誰よりも人の弱さを理解出来る優しい生徒…
「…爆豪さんや緑谷さん、切島さんがあなたに惹かれる理由が何となくわかった気がしますわ」
「え…なに?」
ボソリと呟くと、それが聞き取れなかった四楓院は聞き返してきたが、八百万は微笑むだけで同じことは言わなかった。
この子は、無意識に人の尖った心を優しく暖めてくれる。下がった自己肯定感、不安、自信喪失…それらを全て。名は体をあらわす…春の風咲き乱れ…ブロッサム・ロック。彼女は春の風そのものだ。
「四楓院さん、轟さんのところへ戻りましょう!」
八百万の表情が変わった。それを見た四楓院は笑った。
「なにか、策があるんだね!副委員長!!」
「ええ!」
「よし、そうなったら早速…!!?」
八百万と話をしていた視線の先、そこに相澤の姿が写った。
「八百万、お前は体育祭以降の自身の喪失が見てとれる」
そう言うと相澤は捕縛武器を八百万に向けて投げてきた。
「痛いところは突いてくぞ。手数勝負しようか」
「させない!!」
「ーーー!?」
四楓院は咄嗟に相澤に蹴りにかかった。捕縛武器は八百万を外した。
「四楓院さん!」
「ここは私が引き受ける!ヤオモモちゃんは早く焦凍くんのところへ!」
「え、でも…!」
「期待してるよ、副委員長!」
八百万の前に立った四楓院は視線だけそちらに向け、二っと笑った。それを見た八百万は来た道を戻るため走った。しかしそれを相澤が見逃すわけがなく捕縛武器を投げたが…
「あなたの相手は私ですよ…相澤先生!」
四楓院は自ら自分の右腕に巻き付くように捕縛武器を止めた。
「お前にはまだ早いぞ…四楓院」
「上等ですよ…焦凍くんが動けるまでの時間稼ぎになればいいです!」
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