第10章 突っ走れ期末テスト!
「八百万!四楓院!行け!!」
「そういうアレか…なら、好都合だ」
「痛っ!!」
相澤は捕縛武器を轟に巻き付けると、一気に宙へぶら下げた。
「どのみち攻撃的なお前から捕まえるつもりだった。」
「捕まえた…つもりですか!こんな拘束燃やすか氷結かですぐ……!?」
「どっちでもいいが、落下先に気をつけろよ」
轟は目を疑った。相澤は轟が拘束をほどいた際に着地するであろう地面いっぱいにまきびしをばらまいたのだ。
「まきびし…忍者かよ。嫌らしい対策してくるな…」
「そりゃヒーロー殺しの時とは違うからな。ヒーローの個性も人数も知ってる。迎撃態勢バッチリの敵だ。随分と負担の偏った策じゃないか。女の子を慮るのは立派だが、もう少し話し合っても良かったんじゃないか?」
「話し…」
相澤はそう言い残すと、ゲートへ向かっていった2人を追いかけた。
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「脱出ゲートまであとどれくらいかな…!」
「わかりません…もっと最短ルートあるかもしれませんわ。二手に別れた方がよろしいのでは…?」
「いや、それだとコミュニケーションが取れなくなる。現場でお互いの状況把握ができないのは危険すぎるからやめた方がいいよ」
「…轟さんは無事でしょうか」
四楓院は後ろを走る八百万に目をやった。不安と自信喪失…その表情が明らかに出ていた。
「焦凍くんなら大丈夫だよ…きっと切り抜けてくる。今は脱出ゲートを目指そう!相澤先生に見つかったら間違いなく個性が使えなくなる。そうなったら私たちの負けは確定だよ。そうならない為に、私やヤオモモちゃんにしか出来ないことをやろう?」
「私にしか、できないこと…」
「私の個性は美肌だから皮脂を使って攻撃したり地面を滑ったりすることしか出来ない。でもヤオモモちゃんは、その博識と個性で何でも作れちゃう!ある意味最強だよ!」
「四楓院さん…」
「力を合わせればこの試験合格出来るよ、きっと!」
彼女の言葉と笑顔に、心に突っかかっていた何かが取れた気がした。体育祭から無くなっていた自信。何事に於いてもこれでいいのかと言う不安…そして同じ推薦入学者の轟の優秀さに己の未熟さを感じ、八百万は自己肯定感が下がっていた。