第10章 突っ走れ期末テスト!
一通りの説明が終わると、試験会場全体に放送が流れる。
『皆、位置についたね!それじゃあ今から雄英高1年期末テストを始めるよ!レディイイーーー…ゴォ!!!』
ブザーがなった瞬間、相澤はゴーグルを装着した。そして凄まじい跳躍力で電柱のてっぺんまで登った。八百万たちはまず作戦を練るため会場内を走る。案を出してきたのは轟。
「八百万!何でもいい、常に何か小物を創り続けろ。創れなくなったら相澤先生が近くにいると考えろ。この試験、どっちが先に見つけるかだ。視認でき次第俺と四楓院が引きつける。そしたらお前は脱出ゲートへ突っ走れ!それまで離れるなよ」
「………」
コミュニケーション能力。この社会…ヒーローとして地味に重要な能力。特定のサイドキックと抜群のチームプレイを発揮出来るより、誰とでも一定水準をこなせる方が良しとされる。その辺に関してはこの3人は問題ないのだが…
「(デクくんと勝己くん大丈夫かな)」
あの2人が1番心配だ。爆豪が1人先駆けているのは言われずとも分かる。そこに寄り添おうとする緑谷の姿も…
そんな四楓院の隣で八百万は、小物を創り出していたのだが…
「なにか出せっつったが、お前なんだそれ」
轟が半分呆れた顔で八百万を見た。下に落ちているのは可愛らしい人形。
「ロシアの人形、マトリョーシカですわ」
「そうか…とりあえず個性に異変があったらすぐ言ってくれ」
「さすがですわね、轟さん…」
「ヤオモモちゃん?」
「相澤先生への対策をすぐ打ち出すのもそうですが、ベストを即決できる判断力です」
「………普通だろ」
「普通…ですか…雄英の推薦入学者…スタートは同じハズでしたのにヒーローとしての実技に於いて、私の方は特筆すべき結果を何も残せてません…騎馬戦はあなたの指示下についただけ…本戦は常闇さんに為す術なく敗退でした…」
「………八百万、マトリョーシカ…」
「!!」
「2人とも来るよ!!」
誰よりも体が動いたのは四楓院だった。後ろへ回し蹴りをするが一足遅かった。電線からぶら下がり気配を消していた相澤は、捕縛武器を離すと着地した先にいた四楓院に目掛けて捕縛武器を投げた。
「四楓院!」
「!!」
「この場合はまず回避優先すべきだ…先手取られたんだから」
轟は咄嗟に四楓院を突き飛ばした。