第10章 突っ走れ期末テスト!
「お前の笑顔や優しさに救われてるやつだって、必ずいる。緑谷や、爆豪もそうだ」
「え…」
「緑谷は、己の弱さと向き合い、誰よりも努力している。そのなかで、奴唯一のコンプレックスだった『デク』という呼ばれ方も、お前の一声で今じゃヒーロー名にするほど、前向きに捉えるようになった。爆豪に至っちゃ、完全にお前に心を開いてる。そんな奴が疫病神とは俺は思わないね」
相澤の言葉に、さくらの心に詰まっていたなにかがスっと抜けた。
「お前は、お前の知らないところで誰かが救われてるってことを知らないだけだ。自信もっていい。後ろめたく思う必要は無い…他のやつの言うことなんか気にするな。ひたすら前を向いて、上を目指せ。PLUS ULTRAだ。忘れるな」
気づいたら相澤の胸に飛び込んでいた。
ーーーどうして、この人は…こんなにも…
一言一言が優しい。それはきっと雄英教師としてじゃなく、イレイザーヘッドとしてじゃなく、相澤消太の言葉だと思えた。それほど心に染み込んでくる。
「消ちゃん、ありがとう」
「ああ…」
もう、全てが愛おしい。今までどれだけ、彼に救われてきたのだろうか…ありがとうの言葉だけじゃ足りない。この気持ちはどうやったら彼に伝わるだろうか。ふと、目が合う。
「ん?どうした?」
さくらはそっと彼の顔に近づく。そしてーー。
「んっ…!」
相澤の唇に、己の唇を押し当てた。我ながら大胆な行動だったと思う。でも、言葉だけじゃ足りないし、これをしてもまだまだ足りない。それほど相澤への感謝の思いは大きかった。
「驚いた…まさかお前からしてくるとはな」
そう言いながらも相澤は満更ではないようだった。
「たまにはいいでしょ?」
「ああ、そうだな」
気づけば笑っていた。相澤とはいつまでもこのままでいたい。そう、切実に願った。
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