第10章 突っ走れ期末テスト!
「…なんか相澤先生、あなたに少し甘い場面があるような気がするのよね」
「き、気のせいだよ!あの鬼の相澤先生だよ?私なんかにそんな事する訳ないよ!?」
「…とにかく試験勉強に加えて体力面でも万全に準備を…痛っ!」
みんながテストの話をしていたなか、緑谷の頭に誰かの肘が当たる。それも、わざとらしく。
「ああ、ごめん。頭大きいから当たってしまった」
嫌がらせ全開な態度で緑谷を見下していたのはB組の物間寧人だった。
「君は、B組の物間君!よくも…」
「君たち、ヒーロー殺しに遭遇したんだってね」
「!?」
物間の言葉に、さくらの肩が大きく揺らいだ。
「体育祭に続いて、注目浴びる要素ばかり増えてくよねA組って。ただその注目って決して期待値とかじゃなくって、トラブルを引きつける的なものだよね。ああ…怖い。いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて、僕らまで被害が及ぶかもしれないなあ…疫病神に祟られたみたいに…」
「…疫病神…」
「ああ、怖…うぐ!?」
物間の嫌味タラタラな発言を手刀で止めたのは、彼と同じくB組の拳藤一佳だ。
「物間、しゃれにならん。四楓院さんと飯田の件知らないの?」
「拳藤君!」
「ごめんなA組!こいつ、ちょっと心がアレなんだよ。アンタらさ、さっき期末の演習試験不透明とか言ってたね。入試の時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」
「え、ホント?なんで知ってるの?」
「私、先輩に知り合いいるからさ…聞いた。ちょっとズルだけど」
「いや、ズルじゃないよ!そうだ、きっと前情報の収集も試験の一環に織り込まれていたんだ…そっか、先輩に聞けばよかったんだ。なんで気づかなかったんだ…ブツブツ…」
緑谷特有のスイッチが入り、拳藤が少し引いていた時に手刀で気絶していた物間が、まだ青ざめた顔で起き上がる。
「バカなのかい拳藤…せっかくの情報アドバンテージを…こここそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんだ…」
まだ無駄口を叩く物間に、拳藤がさらに手刀をくらわせ、また気絶させると「憎くないっつうの」と言いながら物間を引きづってその場を去っていった。
「拳藤さんってB組の姉御的存在なんだな…」
そうみんなが見送る中、さくらの表情は暗いままだった。