第10章 突っ走れ期末テスト!
「おふたりじゃないけど、うちもいいかな?二次関数、応用つまづいちゃってて…」
「え…?」
「悪ィ、俺も!八百万、古文わかる?」
「え!?」
「俺もいいかな…いくつか分からない部分あってさ」
耳郎に続いて瀬呂、尾白も便乗し、「お願い!」と迫られる。誰かに頼られる。それがとても嬉しくなった八百万は目を輝かせ、「もちろんですとも!」と勢いよく立ち上がる。これをきっかけに八百万の勢いは全開となる。
「では、週末にでも私の家でお勉強会を催しましょう!」
「マジで?ヤオモモんち超楽しみ!」
「ああー…そうなるとまずお母様に報告して講堂を開けていただかないと!皆さん、お紅茶はどこかごひいきありまして?我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなので、ご希望がありましたら用意しますわ!もちろん必ずお力になってみせますわ!勉強の事もまかせてください!」
普通の家庭にはない講堂、イギリスのブランド紅茶の名前などナチュラルに生まれの違いを叩きつけられた一同だったが、普段見ないぷりぷりとした八百万を見てどうでもよくなり、むしろホワホワとした感情が現れていた。そんな様子を見ていた切島が、これみよがしに爆豪に一言。
「この人徳の差よ」
「俺もあるわ!てめぇ教え殺したろか!」
「わあ!頼む!」
そんなこんなで、大体の生徒が勉強会に参加する中、まだ焦っていない生徒が1人。
「ウフッ…みんな慌てちゃって。今更ジタバタしても始まらないのに。」
余裕ぶっこいてるのは青山だが、順位は18位。むしろ開き直ってる彼の様子を見て、障子が歩み寄る。
「お前は少しジタバタした方がいいんじゃないか?」
「…それが何かな?…何かな?」
そんな様子を少し笑いながら見ていたさくらの元へ耳郎がやってきた。
「さくらは勉強会くるの?」
「え、私?私は…どうしようかな…」
正直な事を言えば、行かなくても大丈夫な気がする。大体の内容は頭に入ってるし、分からない事があれば同居人兼恋人の相澤がいるから教えて貰えるというのがある。しかし、クラスメイトは自分が担任の教師と同じ屋根の下に住んでいることなんか知りもしない。成績は悪い方ではないため、行かなくても怪しまれることは無い。
「私は遠慮しておくよ。他にやらなきゃ行けないこともあるし」
「そっか!まあ、あんたなら大丈夫か!」