第10章 突っ走れ期末テスト!
目的の駅に着くと、私は消ちゃんに手を引っ張られながら電車をおりた。改札に続く階段をおり、広い広場をぬけ、街中に出る。そして直ぐに入り組んだ路地裏に隠れるように駆け込んだ。息が上がり、肩で呼吸する。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫…ありが…」
「しっ…」
途中消ちゃんに言葉をさえぎられた。
バッ…
腕を引かれたかと思うと、私の体はすっぽりと彼の腕の中に収まった。なんとなく状況が読めた私は息を殺す。消ちゃんの視線は大通りに向けられ、キッと睨むかのように見ていた。そんな中である会話が耳に入る。
「くそ…おい、ほんとにここで合ってんだろうな?」
「ああ間違いねえ。あの駅で降りたのを見た…くそ、どこ行きやがった」
「死柄木のカシラに引き渡す前に楽しませて貰おうと思ったのによ」
「「ーーー!?」」
死柄木…?どういうこと?彼が生きていたことに疑問は抱かないけれど…じゃあ奴らは死柄木の配下のヴィラン?
「よせよせ、お前の楽しませるはケタが違うぜ。カシラに引き渡す前に廃人になったらどーすんだ?オレらの首が飛ぶぜ」
「飛ぶならまだマシじゃねえか?細胞ごと破壊されるよりかよ。“あの日”イレイザーヘッドとかいうアングラヒーローの腕を見た時は、さすがの俺も血の気が引いたぜ」
あの日…消ちゃんの腕の話をしているということは多分USJ事件のことだろう。つまり彼らは雄英を襲った死柄木の配下のヴィラン。
「とにかくさっさと探し出して死柄木のカシラに引き渡しちまおうぜ」
「バカ、先にお楽しみがあるだろ」
「おっと、忘れてたぜ」
2人は下卑た笑い声を上げながらその場から離れていった。緊張が解けた私は深く深呼吸をした。
「どうやら、ゆっくりデートはさせてくれねえようだな。とりあえず人目があるうちは大丈夫だろう。」
「う…うん」
そう返事をすると、私の頭に消ちゃんのゴツゴツとした手が載せられた。
「心配はいらん…オレが傍にいる以上はアイツらには指1本触れさせねえよ。USJ事件の時みたいにな」
「うん、ありがとう…消ちゃん」
そう、あの日みたいに…。でも、あの日の弱い私はもういない。次はもう彼を盾になんかさせない。私も鉾となる。
「じゃあ行くか」
「うん!」
私たちは大通りに出ると、ショッピングモールに向けて歩き出した。